西涼の巻・第二十七回:孫伯符、周公瑾共に死すの報が都に届くこと

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 話をするはずが大小に夢中な呉勢を冥琳の部屋に残して、俺と華琳は他の母親たちが集まっているらしい部屋に案内される。
 そこでは、稟、桂花、桔梗という三人が、美以たち四人にまとわりつかれていた。
 千年をあやしている桔梗の膝にはミケとシャムが頭をのせてごろごろしているし、稟の膝の上にはトラが乗っかっている。
 桂花は抱きついてくる美以を押し返そうとしているが、相手のお腹が大きいこともあり、押す手に本気で力を入れているようには見えない。
「……なんだこりゃ」
「美以ちゃんたちは、甘えんぼさんなんでしょうね」
 風の言う通り、ただ甘えているだけで、美以たちに悪気はないのだろう。
「みんな母様のにおいがするのにゃー」
「あんたも、もうすぐ母親でしょうが!」
 変なやりとりをしている猫耳大王と猫耳軍師はおいといて、まずは、膝に座り込まれている稟に近づいてみる。
「稟は大丈夫なの?」
「はあ。まあ、阿喜の世話をする時には退いてくれるので……」
 トラは稟の胸に顔を押しつけて、ごろごろと喉を鳴らしている。かなりご機嫌のようだ。
「桔梗は……大丈夫そうだな」
「成都にいた頃から、こやつらは紫苑に同じようにしておりましたからな。そのあたりは心得ております」
 成都にいた頃は、紫苑に甘えていたのか。璃々ちゃんが大変だったろうことは容易に想像できる。
「にゃ、兄にゃ」
 桂花に抱きつくのをあきらめたらしい美以が俺にようやく気づいて寄ってくる。
 他の三人も彼女の言葉を聞きつけて、わらわら寄ってきた。にーにー、とまるで鳴くように俺を呼ぶ四つの頭を順繰りになでてやる。
「みんな子供ができるとはね。本当に嬉しいよ」
 なでながら感謝を込めてそう言うと、不思議そうに俺を見上げる四つの顔。
「にゃ? はつじょーきにこーびすれば、子供ができるのは当たり前にゃ」
「あたりまえにゃ」
「あたりまえだじょ」
「……まえにゃ……」
 そうか、当たり前か。
 あれ、いま、ものすごく冷たい視線を二対感じたのだけど、気のせいじゃ……ありませんね。
 風さん、華琳さん、桂花が怯えて小さな声を上げるほどの視線を俺に向けるのはやめてください。
「ま、まあ、その、無事に子供が生まれるといいよね」
「うむにゃ」
「あにしゃまとミケたちの子だから大丈夫にゃ」
「そうだにゃー」
 そうして戯れていると、シャムがあくびをしはじめる。
 彼女が眠そうなのはいつものことだが、いまは、妊娠中ということもあって余計にその頻度が高いようだ。
 あくびが他の三人にも伝染し始めたので、彼女たちを大きな寝台のある寝室へ連れて行く。
「あー。おにーさん、ちょといいですか?」
 戻ると、風に、華琳と一緒に部屋の隅へ引っ張っていかれた。
「あのですねー、美以ちゃんたちをお産婆さんに診てもらったのですがー」
「うん」
「問題、とは言えないのですが、少々気にかかることがー」
「な、なにかあるのか?」
 深刻そうではないが、少し顔をしかめている風に、胸がどきりとする。
「お産婆さんが言うには、揃って、双子以上だろうと」
 その言葉はあまりに予想外で、しばらく思考が停止する。冥琳が双子だったのに、また双子、それも、それ以上?
 そこに、風はさらなる衝撃をもたらす。
「何人入っているか、正確にはわからないそうです。四つ子以上は取り上げたことがないので」
「……そ、そっか。……いや、ちょっと待て、お産がかなり大変にならないか?」
 三つ子や四つ子なんて、医学技術が発展した元の世界でもなかなか大変だったはずだ。この世界で、そんなに多人数を産むのは、可能なのだろうか?
「はい。普通なら。でもですねー、美以ちゃんたちに聞いてみたら、南蛮では、お産というのは、いつも、五人くらい生まれるそうです」
「いつもか」
「いつも」
「毎度のことだってよ、にーちゃん」
 なんか、頭痛くなってきたぞ。
 にゃーにゃー言って走り回る子供たちに囲まれている自分の図が想像されて。
 しかも、最低でも十人、下手したら二十人ほどの。
「ということで、おそらくは大丈夫なのではないかとー。もちろん、華佗さんともう数人お産婆さんを確保しておきますがー」
 それまで黙っていた華琳が、ぼそり、と呟いた。
「……猫って多産よね」
「……そうだな」
 それ以上は触れないことにした。
 子供が増えるのはいいことだ、うん。

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