西涼の巻・第二十七回:孫伯符、周公瑾共に死すの報が都に届くこと

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 華琳の勧めもあり、俺たちは養育棟に向かった。
 冥琳の子に会いたい気持ちはみな同じだったらしい。もちろん、俺はその中でも特に浮かれていたと思う。
 途中、報を知って華琳の部屋に急いでいた小蓮が、雪蓮たちを見て、おばけーーーーっと叫んでみたりなどと言うこともあったが、そんな小蓮も一緒に冥琳の子供たちを見に行くことになった。
「子供の処置はどうしたの?」
「私が病を得た――というふりをした――時点で、洛陽の親戚――つまりは私自身だが――に預けるという名目で、乳母――これも私だ――と一緒に呉を出たことになっている」
「や、ややこしいな」
 彼女の死は偽装なわけだから、子供を一緒に連れてくることにも偽装が必要になるわけだが、話だけを聞いているとこんがらがってしまいそうだ。
「姉様は一緒ではなかったのですね」
「後から馬を飛ばして追いついたのよー。一度に倒れると、見え見えすぎるかな、って思って」
「私や子供たち、それに南蛮の四人のために、だいぶゆっくりした旅だったからな。雪蓮が私のしばらく後に倒れたことにしても十分追いつけた」
「あれ、美以たちも来てるのか」
 てっきり、呉にとどまっているかと思ったのだが。
 まあ、こちらでなら産婆やらを手配できて、安心というのはあるけどな。
 冥琳は困ったような微笑みを浮かべる。
「うむ……。なにか我らと違うのか、妊娠しても走り回っていたからな。気をつけてやるのが大変だった」
 な、なんというか、ワイルドだからな、南蛮勢。
 そんなことを話しているうちに、養育棟につく。
 まずは冥琳の子供たちをこの手に抱かせてもらう。
 二人、そっくりな赤ん坊が並んでいる光景は、なんだか奇妙な気分だった。両方とも女の子だし、一卵性双生児なのだろう。
 我が子の重みを手に感じる、
 この瞬間だけは、なんとも言えない。
 一人、黙ってその感覚を味わわせてもらう。
 他の面々がこちらを見ているのは感じるが、いまはそれに構っていられない。
 シャオが、二人とも美人さんだねーなどと言っているが、実際、この大きさの赤ん坊にしては整った顔立ちだと思う。
 俺の子供は全員美人だが。
「名前は決まってるのー?」
「ええ、周循と周胤と」
「でも、穏なんかは、大周、小周なんて呼んでたわよねー」
「まあ、あだ名としては悪くない。幼名もまだ決まっていないわけだしな」
 呉の大小と言うと、俺などは別の姉妹を思い出すのだけれど、どうもこちらの世界にはいないようだからなあ。
「おとなしい子たちだな」
 大小二人は、俺が抱いている間も、呉の面々が覗きこんで話している間も、泣きもせずじっとしていた。たまに不思議そうに首をひねっているだけだ。
「ああ、幸いあまり手がかからぬ子たちのようだ」
 二人ということで覚悟していたが助かっている、と冥琳が続けているところに、反駁の声がかかった。
「それは雪蓮さんたちお二人がいる時だけだと思いますよー」
 いつの間にか部屋に入ってきた風だった。
「あら、風」
「いらっしゃいませー」
 風は、親友で古いつきあいの稟が出産一番手だったこともあって、養育棟の主のようになっている。
 文献での調査はもとより、産婆に弟子入りしたような格好になって、時間の空いた時には市井でも子供を取り上げる手伝いをしているらしい。
 その知識と経験がみんなの世話を見るときに役立ってくれているようで、本当に頭が下がる。
「私たちがいるときだけなの?」
「雪蓮さんと冥琳さんがいると、あまり泣きませんが、いなくなると途端にすごい勢いで」
「人見知りするのかもしれんな」
 冥琳はふうむと腕を組んで考え込む。それに対して、祭が呵呵と笑い出した。
「いやいや、母御とさ……おっと、雪蓮さまが大好きなのじゃろう」
「そですねー」
 風も同意して、俺たちはみなで大きく笑い声を上げた。

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