西涼の巻・第二回:黄漢升、謀りて北郷と競わんとすること

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 翌朝、久しぶりに思春の舌の奉仕で目を覚ました俺は、隆々と天を衝くものをしごき上げながら大まじめな顔で漢升さんたちとの決闘の日時と場所を読み上げる彼女に苦笑するしかなかった。
 そして、いま、俺は思春を組み伏せて、後ろから覆い被さるようにしてつながっていた。
 といっても一度放出した後なので、ゆるやかにお互いの体温を感じているところだ。
 だが、彼女の中の心地よさや、触れる肌の温かさを堪能しても、俺の心は一向に晴れない。
「……私は集中するにも値しないか? ん?」
 俺の腕の中で、錆び付いたような声がする。それに含まれた殺気に、一気に身が引き締まる。反射的にびくんと中で俺のものがはね、甘いうめきが彼女の口から漏れる。
「あ、ごめん。いや、そんなつもりじゃ!」
「おおかた、呉の武将とこのように朝もはやくから睦みあっていることが、また新たな噂になる、とでも考えていたのだろう?」
 くいくい、と小さい動作で腰を動かす思春。その小さな動きが彼女の中では大きなうねりとなり、俺を締めつける。
「気持ちいいよ……。えっと、うん。考えてることなんてよくわかるな」
「ふん、つながっている者の思うことなど、ばれるに決まっているではないか。お前とて触れている女の思いくらい察するだろう」
 そう言ってから、彼女はとてつもなく面白いことを言った、というようにくつくつと笑い転げる。
「おっと、お前は、存外に鈍いところもあったのだったな?」
 彼女が言っているのは、俺が彼女になかなか手を出さなかったことだろう。人間、一度思い込んでしまうとなかなかその先入観から離れられず、自縄自縛に陥るものだ。
 いけないと思っていても、なかなかそれをはねのけるのは大変だ。
「あー、えっと。それはもう勘弁してくれよ」
 言った途端、ぎゅう、と彼女の中が狭くなる。まるで絞られているような締めつけに、思わず声が漏れる。
「馬鹿め。……んっ、許されると、思ったか」
 俺を圧迫することで、自分自身も快楽を感じるのだろう。彼女の息は段々荒くなっている。
 それでも、本格的にことをはじめるにはこのゆるやかな時間が大事すぎて、俺たちはお互いを刺激しすぎないよう気をつけながらむつみ合う。
「真面目な話、見られるようなへまはしていない。妙才殿にはこの部屋で会ったがな」
「……え」
 思わず聞き返す。秋蘭と会ったって?
 そりゃ、たしかに秋蘭は昨晩──というよりは、俺が蜀にいる間は毎晩──ここに泊まったはずだが、てっきり、思春が忍んできたときには自室に戻っていたものと思っていたのだが……。
「なにを驚く? 夜は妙才殿の相手をしていたのだろう? 朝は私だ。問題はなかろう」
 首をひねって、不思議そうに見上げられる。
 本気で不思議に思っているのだろう、妙に幼い表情。普段見せないその顔が、あまりにかわいくて、俺はついぎゅっと抱きしめてしまう。
「うん。問題ない。なにも問題ない」
「おかしなやつ」
 そうして見せてくれる笑みも、愛らしい。いつもきつい目つきなだけに、優しい目で見られた時の破壊力が半端ではない。
 俺はもっと彼女の顔が見たくて、体を離し、片脚を掴む。体位を変えるのだとあちらも気づいてくれたようで、二人協力しながら、彼女の体をひっくり返した。
「んんぅっ」
 中に入れたまま体を回転させたせいで、予期していなかったところを刺激されたのだろう。のけぞって体を震わせる思春。
 俺も、少しひきつれた感じだったが、ゆっくりと動かすとその感覚もなくなって、ただ、彼女の熱がとても心地よい。
 思春の手が持ち上がり、俺の頬に触れる。
 (いら)うように、なだめるように、指が動く。
「この地でばらまかれた噂とやらに、よほど心動かされていると見える」
「それは……」
 否定はできない。俺自身の噂など気にもならないが、しかし、俺の愛しい人たちまで巻き込まれているとなったら話は別だ。
「だが、一刀。お前が揺らげば、女たちは……んっ、余計に揺らぐぞ」
 優しく、閨でしか呼ばぬ名で呼ばれる。
「そうだな……。ごめん、思春」
「私に謝ることか。だが、くだらぬ噂など跳ね返せるだけの侠気、見せねばなるまいぞ」
「うん。そうだな」
 頬にあてられた手を、両手で握り返す。彼女の脚が蠢き、鞭のように腰に絡みつく。
「とはいっても」
 両足を絡めて、ぐいと体をひっぱられ、深く深く彼女の中に導かれる。結合部からもたらされる熱が、あまりにも熱く、二人でとろけてしまいそうだ。
「お前とて甘えたいこともあろう。どうだ? 私の胸で泣いてみるか?」
 からかうように言われた声は、真剣な声音も帯びている。きっと、このまま抱きついて、ひとしきり泣いても、彼女は間違いなく受け止めてくれるだろう。
 その心遣いが本当に嬉しく、けれど、だからこそ俺は甘えることができなかった。
「ありがとう。でも、いまは思春を鳴かせることにするよ」
 ぷりっとした乳房に顔を埋め、舌を肌に這わせると、途端に体が震え、中のうねりも強くなる。
「ふん、ひどい……んんっ、男、だ。ああっ」
 そうして、俺は、彼女を鳴かせることに集中した。

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西涼の巻・第二回:黄漢升、謀りて北郷と競わんとすること」への4件のフィードバック

  1. 初コメントです。 この作品「玄朝秘史」は外史まとめサイトで投稿されてた頃に出逢い拝見させて頂いていました。最近此方のサイトを見つけ改めて楽しませて(誤字脱字をたまに見受けられますが)頂いてます。 「玄朝秘史」を含め、魏ENDその後を記した外史(他の作家さんのSS作品等)にてちょくちょく見られるのですが蜀陣営は何かと三国同盟を揺るがしかねない問題を起こしてたりします。武将(主に焔耶)よりも軍師(ぶっちゃけ朱里)の方が和平を乱す要因になりがちですよね・・・何でなのでしょう?

    •  難しいところですが……。蜀が確保している土地がどこまでいっても田舎な上資源が少ないというのがやはり難点ではないでしょうか。
       お金の面でも、魏、呉に比べればやはり厳しいものがあります。
       そして、それらを理解してしまうのが軍師陣だということではないでしょうか。
       その上で、思い切ったことをしないとどうにもならないと思い詰めてしまうのは、在地の武将ではなく、他所から来た立場故かなとも思います。
       あくまで私見ではありますが、いかがでしょうか。
       まあ、もちろん、作風によってはそんなことはまるでなかったりするとは思いますけども……。

       誤字脱字については気をつけてはいるのですが、潰しきれず申し訳無いです。はい。

  2. 一刀、ポカリ作んなよっ!(笑)
    策(?)に振り回されてオロオロする翠の萌え。
    あれ?前もこんな感想書いたような・・・?

    そして身に覚えがありすぎて、噂を否定できない一刀サン。
    そりゃ朝から、ちゅっちゅかしてたら、そんな噂も流れるわな。

    •  水分補給大事!w
       翠さんはしかたないですね。策謀に誘おうにもまっすぐすぎてたぶん乗ってくれないし、といって星ほど割り切れないという。蜀だと翠と白蓮はそのあたり苦労しがちですかねw

       噂は、根本はそこまで間違ってないというか……実際、毎晩ですからねぇw

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