洛陽の巻・第十六回:帳幄の奥、荀公達をもって謀をなさんとすること

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 再び猫耳頭巾を深く被りなおし、そそくさと廊下を早足で歩く桂花の背中を見送っていると、隣にいた恋がなにか言いたそうにこちらを見つめてきた。
 この娘の少々乏しい表情変化にようやく慣れてきて、なにか言いたそうな時くらいはわかるようになっている。
「……ご主人様。華雄、呼んだ方が、いいかも」
 華雄は今日の警護から外されているはずだ。わざわざフルメンバーにしたいということは不穏な空気があるということだろう。
 しかし、ご主人様、なんて呼ばれるのはくすぐったくてしょうがない。恋にとっては主筋である月――董卓もまた真名を許してくれてそう呼んでいる――と詠が、俺の侍女として配される関係でご主人様と呼んでいるものだから、それに倣っているわけだが……。
 閨の戯れで華琳たちに言われるのとはやはり違う。
「なにかあった?」
「……なにもない。ただ……いやな予感、する」
「そうか、じゃあ、呼んでくれるか」
 こくこく、と頷く恋。なんだかこういう動作を見ていると、この女性があの世にも名高い飛将軍とはとても思えないんだよな。
 恋自身が動物好きだからか、本人の動作が仔犬みたいだ。
「……ご主人様、恋が扉閉めたら、閂かけて、窓全部閉めて」
「了解。朝までひっこんでるよ。それでいいかな」
「……うん、いい」
 少し考えるように小首をかしげたあと、こっくりと頷かれる。彼女が扉を閉めると、言われた通り、閂を通し、鍵をかけた。

 奥の小部屋に顔を出すと、麗羽たちは三人でダルマおとしに興じていた。こないだお土産で買ってきたんだけど、案外楽しんでくれてよかったよかった。
 まあ、ダルマおとしとは言っても、達磨大師モチーフではないみたいだけど……。
「悪い。窓閉めるの手伝ってくれないか」
「はーい」
「わかりましたわ」
 四人で手分けして、窓を閉めてまわる。袁家全員を収容する部屋なので、寝室だけで三部屋、その他に四部屋と部屋数がある。
 大人数がいても気がつまらなくて助かるが、こういう時は大変だ。
「あ、鎧戸も閉めて」
「んじゃ、あたいは灯を入れるー」
 外からの光が入り込まなくなる代わりに、猪々子が灯火を点々と用意していく。このあたり、さすがは名家に仕えていたせいか、他の武将たちとは灯りを置く頻度がまるで違っていた。
 庶人出身の季衣や流琉が見たらもったいないと口をそろえて言うだろうほどに明るくしてくれるのは、俺としては非常にありがたいところだ。
 作業を終えた俺たちは、ちょうどいい時間となっていたので、夕食の準備をはじめた。と言ってもこの部屋では本格的な調理はできない。必然的に、乾物や果物、野菜類、それに昼間に買っておいた点心の類となる。
 麗羽などは夕食では果物しか口にせずに、朝食と昼食をたっぷり摂るタイプなので、ほとんどが俺と猪々子の口に入ることとなる。俺の場合、酒のつまみという意味も強いけど。
 こちらに帰って来てからすっかり飲んべえだ。
「それじゃいただきまーす」
 みんなで卓につき、酒杯を片手に食事をはじめる。
「桂花さんてば、元々はわたくしのところにいたというのに、一切挨拶もないんですのよ。ひどいとお思いになりませんか、我が君」
 汁気たっぷりの桃を口に運びつつ、麗羽がそんなことを言う。美味しそうだったので少しくれと言ったら、麗羽手ずから小ぶりの包丁で切って、俺の口元に桃の一片を差し出してきた。
 少々気恥ずかしかったがそのままつまむ。じゅくり、と実が舌の上で崩れ、甘い果汁が口の中に広がった。
 麗羽に微笑みかけると、あちらも笑みを返してくれた。
「あいつは華琳に心酔しているからなあ。余計、元の所属とか匂わせたくないんじゃないかな」
「まあ、華琳さんは魅力的な女性だとは思いますけれど」
 麗羽はもう華琳を目の敵にするのはやめていた。
 華琳の勢力下にいるからなんて理由ではなく、色々としこりがほぐれてきているようだ。いつか、三人でゆっくりと話す時間を取りたいものだ。
「そうそう、我が君が呉へいらしている間のことですけれど」
 そうだ、麗羽たちが呉へ一緒に行くかどうか決めておいてくれと言っていたのだった。
 美羽は――雪蓮への恐怖はあまり強くなくなったようだが――さすがに呉に足を踏み入れるつもりはないだろうし、麗羽たちを連れて行こうと思っていたのだ。
「わたくし個人としては我が君と同道させていただきたいのですけれど、華琳さんと白蓮さんから少々頼まれ事が」
「華琳と伯珪さん?」
 またよくわからない組み合わせだな。
「なんでも、遼東の同姓の方のところに釘を刺しに行くとか?」
 ちらっと斗詩のほうを見やる麗羽。彼女の言葉を継いで、斗詩が説明をはじめる。
「燕王を名乗って独立の機運を見せている人がいるんで、説得して……。無理なら潰すつもりじゃないかと」
「遼東公孫氏か。公孫淵だったっけかな……」
 さすがにそのあたりは俺の記憶も曖昧だ。群雄なら、例のごとくこちらでは女性かもしれないけど。
「表向きは、内烏桓各部族の慰撫ということですね。主に河北にいるので、私たちも一緒にってことらしいです」
「内烏桓?」
「はい、いま白蓮さまが一刀さんから預かっている烏桓部隊を使って、漢側にしっかり降るほうが得だと各部族に見せつけたいみたいです。白蓮さまは、その……烏桓に恨みがありますけれど、背かなければそのほうがいいと思ってらっしゃるみたいで」
「ふむ……」
 指揮下にある烏桓部隊を率いて内烏桓諸族をまわることで兵を得るか、あるいは圧力をかけるつもりか。なかなか考えるな。
 それも烏桓部隊を既に掌握しているという自信があってこそのものだろうけど。白馬長史の名前は伊達じゃないようだ。
「しかし、伯珪さんは蜀の大使だろ。いいのか、そんなことしていて」
「公孫氏のほうは、どうも朝廷の筋かららしいので、白蓮さまも断れないのではないかと……」
 朝廷も珍しく仕事をしているんだな。しかし、そうなると華琳としても口を出せまい。一地方とは言え独立を許せば国家が安定しないのは確かだから。
「うまくいけば、そりゃあいいんだろうけど……。危ういなあ」
「だから、曹操さんは、私たちをつけたいんじゃないかと」
「遼東を除けば、元々はわたくしと白蓮さんのものだった土地ですものね」
 白馬義従に烏桓突騎、それにかつての袁紹軍の二枚看板か。確かに地の利がある上に精鋭中の精鋭を連れて行けば、遼東公孫氏との『話し合い』もうまく行きやすいだろうな。
「ん……華琳とも話してみるよ。ただ、なにがあるかわからないから、気をつけてね」
「大丈夫だよ、アニキ。あたいと斗詩がついているからさ」
 これまでむしゃむしゃと夕飯を食べるのに夢中だった猪々子がにやりと笑う。
 戦闘になるかもしれないことで、猪々子は楽しみでたまらないようだ。
 彼女はおそらく、この部屋に押し込められて一番ストレスがたまっている人物だろう。できることなら自由にさせてやりたいのはやまやまなのだけど。
「できれば、自分の部隊を率いたいもんだけどなー。アニキ、あたいらにも部隊ちょーだいよ」
「文ちゃん、ちょっとっ」
「そりゃー、斗詩はさー、書類仕事もできるからいいけどさ。あたいだって役に立ちたいじゃん?」
 まるで子供が新しい玩具をせがむように軽い口調で言っているものの、猪々子の瞳の光は強い。
 確かに、文醜ほどの武将をただ飼い殺しにしておくのはあまりにもったいない。特に彼女は華雄や恋のように個人の武を磨くことだけに夢中でいられるタイプでもない。
 いずれは華琳に相談して、彼女たちに部隊をもたせることを検討しなければならないだろう。ただし、袁家にそれほどの力を与えていいのかという疑念を持つ者がいまだに存在することは問題となるかもしれない。
 美羽が政治力をつけ始めているのも懸念材料となる。
 そういう心配をする人は、以前よりも人材を失っている美羽や麗羽が、大陸を制した覇王を出し抜けるとでも思ってるのだろうか。
「そうだな、考えておくよ」
「我が君、あまり、お気になさらなくとも……」
 にんまりと顔をゆるめる猪々子に対して、麗羽は少々困り顔で俺に耳打ちしてきた。麗羽がこんな顔するなんて珍しいこともあるものだ。
「いや、猪々子の言うことももっともだよ。それぞれにできることをやりたいと思ってくれるのは本当に嬉しいしね。ただし、現時点では、いつとは約束できないよ」
「んー、これだからアニキってば好きだぜ」
「ありがと」
 納得してくれたらしい猪々子の言葉にほっとしながら、礼を返す。しかし、それがお気に召さなかったようで、彼女はぶーと口をとがらせた。
「あー、本気にしてないな。猪々子ちゃんの愛の告白を」
「ぶ、文ちゃん酔ってるの?」
「あたいは正気だよー。ひどいや、斗詩」
 猪々子はほとんど食べるのが中心で酒は飲んでいないはずだ。たぶん、いまこの卓で一番飲んでいるのは俺だし、正気だというのは本当のことだろう。
「いや、だって……猪々子は斗詩が好きだろ?」
「そりゃ、好きさ。あたりまえだろ。斗詩は大好きだけど、アニキだって好きだし、麗羽様だって好きだぜ?」
 声音に真剣な色がのっている。俺は背筋をのばした。卓についている他の二人も、猪々子がまじめに話そうとしているらしいと気づいたのか、口をつぐんで展開を見守っている。
「あたいも大概莫迦だから、うまく言えないけどさ」
 へへ、と照れ笑いを浮かべつつ、猪々子は続ける。
「こないだ、アニキ襲われたろ?」
「うん」
「あれ聞いて、麗羽様なんてすんごい取り乱しちゃってたけど、あたいも結構いろんなこと考えたんだよ。たぶん、斗詩も」
 ちら、と横目で麗羽を見るとすました顔をしていたが、その顔が真っ赤に染まっていてはごまかしようがない。斗詩は斗詩で猪々子の話に神妙な顔をして聞き入っている。
「あたいにとってみたらさ、斗詩がいて、麗羽様がいて、アニキがいるのが幸せなんだって、その時気づいてさ」
 名前を呼ぶ度に、彼女はその相手を一人一人じっと見つめた。
「そりゃ、アニキだからこそちんこになれとか言ったし、抱かれもしたけど……」
 確かに無茶苦茶なことを言われたな。あたいのちんこになれって言われた時はどうしようかと思ったものだ。
「あの時にははっきり気づいてなかったけど、あたい、アニキのことちゃんと好きなんだなあ、ってさ。そんな風に思ったわけ」
 なんだか嬉しそうに猪々子は笑う。朗らかにあけっぴろげに。
「だからさ、あたいはアニキが好きだよ」
 真っ正面から、にっこりとそう笑いかけられて、俺はかっと体中の血液が燃え上がったかのような熱と共に、この上ない幸福感に包まれていた。
 そんな俺の体がぐいとひっぱられ、無理矢理に違う方を向かされた。その先にいるのは、おかっぱ頭の黒髪の女の子。
「と、斗詩?」
「一刀さん。私も、あなたが好きです」
 俺の心を刺し貫くように、斗詩の言葉が入り込んでいく。頭が理解するより前に、彼女の言葉が心を包んでいた。
 しかし、その余韻を味わう間もなく、今度は後ろから柔らかな感触に抱き寄せられる。
「我が君。わたくしの我が君。愛しておりますわ」
 耳元で囁く声は、紛れもなく袁本初のもの。
「あー、ずるいですよ、麗羽様」
「姫ったら、もう~」
「ふふん、あなたたちがまだまだ甘いのが悪いんですのよ」
 三人が騒ぐ声が聞こえる。ぎゅっと抱きしめられる麗羽のぬくもりを感じる。肩口から胸を押さえる腕を、ぽんぽんと軽く叩く。
「俺も……俺も、大好きだよ。猪々子。斗詩。麗羽」
 少し、涙まじりになってしまった。
 あまりにも幸せで。あまりにも、愛しくて。
 この時間が、大事すぎて。
「でさ、今日はちょうど美羽さまたちもいないんで、ちょっと提案なんだけど……さ」
 少し掠れた猪々子の声。興奮を押し殺したような声音は、既に淫靡な響きを帯びている。
「麗羽様はともかく……その、アニキは斗詩の代わりにあたいを抱いて、あたいの代わりに斗詩を抱いてるだろ?」
 そういう風に言われればそうかもしれない。ちんこになる、ということがどういうことか実際は俺もよくはわかっていないのだが……。
 二人で一人を抱いている、ということになるのかな。
「一度、男と女として抱かれてみたらどんな感じなのかなー? とか、思ったりするんだよね、これが」
「ぶ、文ちゃん」
 真っ赤になった二人が俺をじっと見つめている。斗詩も文句を言っているわりに、いやだというわけでもない。どうやら興味はあるらしい。
「三人一緒はだめだぞ。今日はちょっと危ないんだ。誰かは警戒していないと」
 俺も雰囲気に呑まれて、そんなことを口走ってしまう。
「あら。でしたら、一人ずつ可愛がっていただけばよろしいんじゃありません?」
 事も無げに言うな、麗羽。
「れ、麗羽様まで!」
「何を言っていますの、斗詩さん。我が君を喜ばせてさしあげるのですから誇っていいことですわよ?」
「そ、そりゃそうですけど……」
 この状況だとしてない人が見たり聞いたりすることに……と口の中でもごもご呟く斗詩。
「ああ、もううるさいですわ。よろしいですわ。まずはわたくしが斗詩と猪々子にお手本を見せてさしあげますわ!」
 そう言うと麗羽は俺の体を離した。後ろで衣擦れの音がする。早速服を脱ぎ捨てているようだ。
 後ろを振り向く誘惑にかられるがなんとか耐える。麗羽は俺が見ていると動きが鈍ってしまうから、脱ぐのだけは任せてしまった方がいいのだ。
 その間に視線で指示して、猪々子に卓の上を片づけさせる。こうなったら、楽しんでしまう方が早い。
「あなたたちはわたくしと我が君が愛し合うところを存分にご覧になって、男と女というのはどんなものか勉強したらいいですわ」
 なんだか性教育みたいな文言だが、うっとりとした麗羽の声で直に言われてみると、これがまた刺激が強い。既にズボンの布地がつっぱって痛い。
「……我が君」
 麗羽の声に応えて振り向く。美しい体を見せつけるように麗羽が立っていた。身につけているのはアクセサリのいくつかと、俺という所有者がいる証、黒革の首輪だけ。
 瑕一つない白い肌が淡く朱に染まり、俺の視線が彼女の肌の上を動くたびにその濃度をあげていく。丸まると張った乳房、腰から尻にかけての肉のやわらかさ、淡く繁る股間から太股へと流れるラインの精妙さ。
 どれもが美しく、名前の通り麗しい。
「おいで」
 小さく言うと、おずおずと近づいてくる。彼女ののばした腕を取り、後ろを振り向いて、言い置く。
「二人はそのまま見てること」
「あ、う、うん」
「は、はい」
 気圧されたのか妙に大人しい二人から視線を戻すと、少し拗ねたような麗羽の顔に突き当たる。やわらかく微笑み、そのまま口づけた。
「わが……きみ……」
 薄い唇をはむはむと俺の唇ではさみ、その合間からちろちろと舌を這わせる。
「は……ふ……」
 麗羽の大きな瞳が潤み始める。唇を割り開き、舌を侵入させる。やわらかく応じてくる麗羽の舌を一度避けると、必死になって追いかけてくる。それを迎え入れるようにして舌を合わせる。
 ちゅぷり、くちゃり、といやらしい音が直に脳内に響く。俺たちはごく間近で、お互いの瞳に映る自分自身を覗き込むように見つめ合う。麗羽の背中を、俺の掌がすべる。麗羽の手が、俺の服のボタンを一個一個外し始める。
 上着が脱がされる。頬の裏側の粘膜をこすりあげる。
 ズボンが落とされる。歯列をなぞるように丁寧になめていく。
 下着が剥がされるが、麗羽の手が届かないので、自分で足を使って振り落とす。ぐじゅぐじゅと唾を交換しあう。興奮で泡立った唾液がお互いの口内にあふれ、喉に落ちていく。それでも間に合わず、口の端からだらだらと二人のまじりあったものが垂れ落ちていく。
 すでに隆々と猛っている俺のものに、麗羽の細い指がしっとりと絡みつく。俺が彼女の舌をきゅっきゅとなめあげるリズムに合わせて、しごきあげられる。長く指が動くたびに、背筋にちりちりと快感が走る。
「す、すげー……」
「わ、私たちあんまり一刀さんと絡んでないものね……って、あんっ」
 麗羽の瞳に怒りの色が走る。唇が離れる。そのぬくもりがなくなるのが少し寂しい。
「猪々子! 斗詩といちゃついていたら、意味がないでしょう。今日のあなた達はあくまでも我が君のものですわよ!」
 振り向いてみると、猪々子がいつものごとく斗詩の胸に手を出していたようだった。悪戯を見つかった子供のように手をひっこめる猪々子。
「うー、それもそうですね」
「二人とも、間が持たなかったら、手をつないでいるといいよ」
 正直、桃色空間で正気で見ていろという方が拷問だしな。それはわかるのだが、猪々子が言い出したことでもあり、あちらで二人盛られてもそれはそれで困ってしまう。
「申し訳ありません、お許しもなく口を離して……」
 謝ってくる麗羽。その間も指の動きは止まらず、俺に快楽をもたらそうと懸命だ。テクニックだけで言えばまだまだぎこちないのだが、麗羽の指はとても繊細に動くので思ってもみないような感触を受けてそれが愉しくもあった。
「いいんだよ、麗羽」
 名を呼ぶとそれだけで嬉しそうに微笑んでくれる。その手を優しく掴み、後ろに回る。もう片方の腕もとって両手を後ろ手に取った。少し進ませて、卓の前で止まらせる。
「足を開いて」
「は、はい……」
 不安ではなく、恥じらいで声が震えているのがわかる。ちらちらとこちらを振り向いては目が合うたびに微笑む麗羽。
 俺に腕を取られ、自由に身動きがとれない名家のお姫様は、それでもなんとかバランスをとりつつ、足を広げていく。
「もう濡れてるな」
 既に、金色の下生えは露に濡れ、きらきらと輝いている。それを指摘すると、すでに朱に染まった首筋が、さらに赤くなる。麗羽は元の肌が白く肌理も細かいから、面白いように染まっていくのがわかる。
「わ、我が君と口づけしていたら、こ、こうなってしまいますわ」
 すっと指を走らせると、びくびくと体が震える。相変わらず麗羽の体は敏感だ。俺の指にねっとりと彼女の感じてくれている証拠が絡みついてくる。
「それだけ?」
「え……」
 振り向いた顔が愕然とした表情に彩られる。
「猪々子たちに恥ずかしい姿を見られて、感じてるんじゃない? いや、最初から見られたかったんじゃない?」
「そ、それは……」
「ずっと思ってたんだけど、俺にお尻を叩かれた時、あれ、痛みやなにやらで気絶したんじゃないだろう? なあ、斗詩、どうだ?」
「え、えっと、それは、その……」
 俺の言った通り手をつなぎ合った二人は赤くなりながら顔を見合わせている。
「猪々子」
「いや、アニキ、さすがにそれは……」
「……いいんですのよ、猪々子さん」
「麗羽様!?」
 見れば、麗羽の顔は陶然ととろけている。俺に押さえつけられ、ある意味でひどい言葉を投げつけられているというのに、彼女の秘所はうるみを増し続け、背筋は微かに痙攣しているほどだ。
「わが、我が君の、はぁ……仰るように……わたくしは……あさましくもいやらしいわたくしは、皆に……はふっ、いえ、愛しい猪々子や斗詩に、見られるぅっ、ことで、快楽をいや増すんですの……ふくっ……」
「はい、よく言えました」
 予告もなく、俺のものを突き入れる。
「ふわああああああっ」
 叫びと共に跳ねた麗羽の体ががっくりと倒れそうになるのを腕に力を入れ、自由なほうの腕で腰を押さえて押しとどめる。彼女は卓に上半身をつけるようにして、体中に走る快感に抗おうとしていた。
「は、はふっ、ふわ、かはっ」
 既に意識が途切れがちなのか、ぶわっと肌に汗が広がり、連続して体が痙攣する。
 あまり刺激しすぎないよう、ゆっくりと腰をまわすようにして責める。感じてくれるのは嬉しいのだけれど、麗羽は感じすぎてしまうとすぐに気絶してしまうので、俺も、そして麗羽自身も愉しくないというし、そのあたりの加減が難しい。
「ああ、我が君、我が君っ……」
 ゆっくりとした動きで、少し意識がまともに戻ってきたのか、譫言のようだが、ちゃんと単語を言えている麗羽に安心する。
「さ、あの時、麗羽はどうしたの?」
「あの、あの時はっ」
 応えようとした麗羽を遮るようにして、斗詩が口を挟む。
「あの時、麗羽様は達してらっしゃいました」
「お、おい、斗詩」
「文ちゃん、ちゃんと見て。麗羽様喜んでるんだよ? あれが、一刀さんが選んだ麗羽様への愛し方なんだと思う」
 なんだか、すさまじく真剣な顔でそう言われた。とんでもない覚悟と決意を秘めた顔に、猪々子がぽかんと口をあけてしまう。
「そうですわっ、我が君に、ふくううううっ、叱っていただいてっ、わたくしは、はっ、はしたなくもみんなの前でイッてしまったんですのっ」
 ぽろぽろと涙を流して、麗羽が告白する。その涙が悔恨や哀しみのそれではなく歓喜が故だと、果たして猪々子や斗詩はわかってくれているだろうか。
 人にはそれぞれの秘めた思いや嗜好がある。俺は愛しい人のそういう部分を引き出し、抱き留めてあげられるならば、なによりの幸せだと思っている。たまたま麗羽の場合、それが非常にわかりやすく発現しているだけだ。
「麗羽は、大好きな人に見られると、余計に感じるんだよな?」
「はひっ、はいぃいっ」
 がくがくと頷く麗羽の顔は涙と汗に塗れて、普段のお姫様ぶりとはとてもかけ離れている。けれど、それを俺はとてもとてもいとおしく思う。
「だから、いつか麗羽の準備ができた時、華琳の前で犯してやるって約束なんだよな?」
「ああっ……くっ」
 俺の言葉に感極まったのか、ぎゅっと麗羽の体に緊張が走る。びくびくと何度も痙攣し、ぶるぶる震える体。その刺激を受けて、彼女の胎内の俺のものが体の奥にたまったものを吐き出し始める。
「――っ!!」
 声にならない叫びを上げ、麗羽は堕ちた。

 意識を失った麗羽を抱き上げ、寝室の一つに運ぶ。寝台に横たえた後、手際よく斗詩が体を拭ってくれていた。
「行こうか、猪々子」
「え、あ、あたい?」
 飛び上がって驚く反応に、つい首を傾げてしまう。
「いやかい?」
「い、いやなわけあるかよ。ただ、斗詩が……」
「私は最後でいいよ、文ちゃん」
 麗羽の意識を失った体をいとおしげに拭い上げ、斗詩が笑って言う。そのさわやかな顔に、猪々子も黙ってしまったようで、素直に俺の後をついてきた。
「なーんか、斗詩も麗羽様もすげーや」
 もう一つ奥の寝室に入ると、猪々子がため息をつきつつそう言った。
「ん?」
「いや、あたいもよくわからないんだけどさ。アニキにかける信頼っていうのかな? すげぇなあ、って」
 そう言われるとなんだか照れてしまうな。
「あ、違うぞ。あたいが信頼してないってわけじゃないぞ?」
 俺が黙っているのをなんと思ったのか、慌てて否定する猪々子。その慌てぶりがまた可愛らしい。
「ただ、ほら、あたい飲み込み悪いから、うん、麗羽様と同じことやれって言われたらなかなか難しいと思うけど、がんばってみるから……さ」
 あまりにもまっすぐな猪々子の言葉に、思わずその体を抱きしめてしまう。
「わっ、なんだよ、アニキ」
「猪々子がかわいいから」
「でも、あたい、おっぱい小さいよ」
 なんでおっぱいが出てくるのかよくわからないが、猪々子のおっぱいは小さいと言い切れるほどではないと思う。
「猪々子で小さいって言ったら、か……いや、なんでもない」
「あー、うん。そこは触れないほうがいいと思う」
 既に脳内でなますに斬られております。
「まじめな話、おっぱいも愛し方も人それぞれなんだ」
「んん?」
 抱きしめながら、帯の結び目を解く。しゅるり、と音を立てて、床に垂れ落ちていく。
「麗羽へやることを斗詩にやっても猪々子にやっても意味がないってこと。もちろん、たまに同じような傾向を持っている人はいるだろうけどね。猪々子を一人の女として抱く時は、別のやり方をするよ」
 上着を脱がし、肌着の上からさわさわと体をなでる。スカートをすとん、と落として、下着姿の猪々子を改めて抱きしめる。一枚一枚脱がした時の楽しみって、少しずつ肌が近くなっていく実感だよな。
「いろんな人を抱いてるアニキはさすが違うな」
「おいおい」
「だって、こんな手際よく……んっ」
 お腹を俺のものがこすった途端、鼻にかかった声をあげる猪々子。
「すご……もうおっきくなってる」
「そりゃそうさ。こんなかわいい子の前にいたら」
「そ、そういうもん?」
 言いながらぎゅっと握ってくる。少々痛いが、声を上げるほどでもない。ぴくぴくと動くのを彼女はじっくりと観察している。
「へぇ……」
「何度も見てるだろう?」
「だって……アニキのちんことして見るのははじめてだし……」
 そう言うものだろうか? 確かに意識が違うと何度見たものでも見方が変わってくることはあるかもしれないな。
「これが、あたいの中に入ったのかぁ……」
「これから入るんだよ?」
「ん……」
「斗詩の中に一度入った後じゃなくてすまんな」
「もう……アニキのいじわる……」
 拗ねたように呟く声に俺はもう辛抱することができなかった。

「ひゃあっ、うぅ、太い、アニキの太いよぉおおっ」
 あぐらをかいた俺の上で、猪々子の引き締まった体が跳ねる。絡み合う四本の腕、しっかりとまわされて離そうとしない猪々子の脚。
 ばちゅんばちゅんと水音と肌を叩く音が混じった奇妙な響きが二人の接合部から漏れる。
 舌をのばしあい、ちろちろと舌先だけをからめあう。とろんと溶けた瞳が、俺のことを見つめ、猪々子の掌が確認するように俺の顔をなでさする。
「なあ、猪々子も子供ができたら産んでくれるか?」
「あたいとぉっ、アニキの、こも、こどもぉっっ?」
 既に舌ももつれぎみの猪々子は、俺の言葉に、外れかけた焦点を合わせ始める。
「ああ」
「……産んでっ、ふひゅ、産んでほしいんだ、アニキ、そうなんだっ?」
「ああ。産んでほしい。猪々子に俺の子を産んでほしい。それ以上にお前を孕ませたい」
「いいよ……。アニキの子なら、産む。産むっ! だから……孕ませて」
 嬌声を抑えつけて、真剣な声で囁かれる。力の限り抱きしめて、思いを込めて腰を叩きつける。ぐりぐりと彼女の中の壁をこすりあげると頭をのけぞらせて、感極まったように彼女は吼えた。
「アニキ、アニキ、アニキ……かず、とっ」
 昂った俺の感情が、彼女の中に注ぎ込まれていった。

 猪々子の中で三度果てた後、気絶してしまった彼女を抱いて、麗羽と斗詩がいるはずの寝室に入ろうとした時、その声は聞こえてきた。
「ぶんちゃん、ふ、ふぅうう、かずとさぁん……」
 低く押し殺した声。くぐもってほとんど単語には聞こえない呻きは、間違いなく斗詩のものだった。何事かあったか、と血の気が引く。慌てて覗き込むとそこには、窮屈な格好でもぞもぞと何事かやっている斗詩の姿があった。
「あー」
 よくよく見てみれば、彼女はスカートの端を口で持ち上げて、その中を一生懸命にいじくっていたのだった。彼女の指の先で、彼女自身の性器がしとどに濡れて音を立てている。
「ふぅ、ふうう」
 くぐもっているのも道理で、スカートをくわえることで声が漏れ出ないようにしているのだ。なにしろ横には麗羽が眠っている。
 俺と猪々子がしている声を聞いていて我慢できなくなったというところか。ただ、声が既に絶えているのに気づいてはいないらしい。
「斗詩」
「ひっ」
 俺の声に上がる顔。その眼が俺と、腕に抱かれた猪々子の存在を認めるのがわかる。途端、彼女の体が震えだした。
「ひ、い、いやああああああっ」
 それでも小さく抑えられた叫びと共に、彼女の股間からびゅっ、びゅっ、となにかが吹き出して敷布を汚す。自分の体の反応に呆然とへたりこむ斗詩。
 まさか、潮吹きでイッてしまうとは……。
「違う、違うんです、違うんです!」
 わたわたと手を振る斗詩。何が違うのかはよくわからない。おそらく、本人もよくわかっていまい。
「落ち着いて、斗詩。ね」
 できる限り優しく言って、とにかく猪々子の体を横たえる。抱える前に少しは綺麗にしたから、猪々子のほうはこれでいいだろう。
「か、一刀さん、わた、私はっ」
「斗詩。深呼吸」
 そう言って、まず自分でしてみる。深く息を吸い、ゆっくりと息を吐く。それを繰り返していると、斗詩もそれにならって一緒に深呼吸をはじめた。
「落ち着いた?」
「はい……」
 顔を真っ赤にしつつ、こっくり頷く。
「猪々子は……」
「あ、はい。文ちゃん、野性的な勘だけはいいんで、万が一なにかあったら気づくと思います。だから、起こさなくても……。あ、剣はいつもの場所に置いておかないと」
 そう言って、猪々子の得物――たしか斬山刀――を猪々子たちの寝台からみて右側の壁にたてかける斗詩。斗詩の大槌は室内でふりまわすのには向いていないので、いまは奥のほうにしまってあるはずだ。彼女なら普通の剣でも充分以上に戦えるだろうな。
「じゃ、行こうか」
「あ……でも、あの……」
「ん?」
 もじもじしてついてこようとしない斗詩。
「我慢できずに自分を慰めちゃってるような娘は……嫌い、です、よね……」
 後半からすっかり涙声だ。俺は慌てて彼女の側に駆け寄った。
「莫迦だなあ。そんなわけないだろ」
「で、でも……」
「そりゃ斗詩にしてみたら恥ずかしいだろうけれど、俺がそれで嫌ったりはしない。斗詩だって、俺が斗詩や猪々子や麗羽の裸を見て興奮しても怒ったりはしないだろう?」
 他の娘たちの裸の場合、怒るかもしれませんが。
「それとこれとは……でも……その……いいんですか、こんないやらしい娘で」
「うん。俺は斗詩だから、欲しいんだよ」
 彼女は俺の顔をじっと見た後、こく、と小さく頷いた。

 先に斗詩が一人でイッて、その上俺に見られたせいで気持ちが急降下したせいか、少し彼女が焦っているようだったので、ことさらにゆっくりとことを進めた。
 挿入した後も、彼女の中のあまりの心地よさに腰を性急に動かしたくなるのをなんとか我慢して、できる限りゆったりと動かし、お互いにつながっていることを意識させるよう、全身を愛撫し続ける。
「一刀さぁん……」
 甘い声で俺のことを呼んでくれる彼女の手も、俺の髪をなでたり、腕につかまるようになったり、とても気持ちいい。
「一刀さんはぁ……なんで、そんなに……あ、そこ、気持ちいい……」
 言われたポイントを記憶しておく。そこを外して攻めておき、次に力強くそのスポットを襲う。
「ああっ、いいですっ、ああ、一刀さん、一刀さん」
「そんなに?」
「そんなにっ、くぅっ、優し……ですか?」
 絞り出すような言葉。けれど、俺の方には実感がない。優柔不断と言われることはあるけれど。あとは甘いとか。
「優しい? そうかな」
「はい」
 ぎゅっと俺の胸に彼女の胸が押しつけられる。たゆんと揺れる乳房が心地良い。
「俺はまだまだ優しく、できてないと思ってるよ」
 優しい、というのは本当に難しいことだと思う。甘い言葉をかけたり、甘い態度をとることは簡単で、良心も満足する。けれど、それが本当に優しさだろうか。一見優しげな言葉が、人を堕落や凶行に走らせることだってある。なにより、俺に、全ての責任がとれるわけでもない。だから、せめて周囲の大事な人達にできる限りのことをしたいだけなのだ。
 幸い、俺の周囲には厳しい態度をきちんととってくれる人がいるので、そのおこぼれとして、優しげな役割を負うことができているのかもしれないけれど。
「……一刀さん、大好き」
 眉根を寄せて考え込んだ俺に、斗詩が柔らかな笑みでそう言った。言葉と共に、まるで別の生き物がいるかのように、彼女の中が蠢く。気持ちよさにさすがに腰が動いてしまう。
「ああ、俺も斗詩が好きだよ」
「あ、でも一つ注文がっ、あるんです」
 ぐっ、ぐっと下から腰を動かしながら、斗詩が言う。その動きに合わせて、ぐるんと腰で円を描くようにすると、その喉から長い長い悦びの声が漏れた。
「なん、だい?」
「文ちゃんを孕ませるなら、私もそうしてくれなきゃ、や、です」
 口をとがらせて言う斗詩に、思わず口づけた。
「もちろんだよ、斗詩」
 俺は、その夜、彼女の中にも三度精を放った。

 この夜、四名の刺客が討ち取られた。三名は俺たちの部屋に向けて時間差でやって来たものであり、一名はなんと華琳の寝所に近づこうとして斬り倒された。そして、同時に五通の密書を携えた五人の密使が放たれ、これも全て捕縛された。
 どうやら、刺客騒ぎはこの密使を放つのが真の目的であったらしい。しかし、密使がそろって自害してしまったために、詳細はわからない。
 密書の内容は俺たち側近にも知らされることはなかったが、おそらくはなんらかの密勅であろうということは推察できた。華琳を討てという檄でも飛ばすつもりだったのだろうか……。
 荀攸さんは、自分が半ば使い捨て――首謀者だと名乗り出た当日に新しい暗殺騒ぎが起これば、首謀者どころかただの下っ端扱い――にされることを知らされてはいなかったらしく、牢の中でそれを悟り衝動的に自害しようとして華琳に止められたのだそうだ。
 華琳いわく、すぐに堕として桂花とならんで私の軍師にしてみせるわよ、だと。きっと華琳好みの美人なのだろうな。
 いずれにせよ、洛陽の刑場には、翌日九体の骸が晒されることとなったのだった。

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洛陽の巻・第十六回:帳幄の奥、荀公達をもって謀をなさんとすること」への2件のフィードバック

  1. 今回のお話は~
    1、桂花かわいい!こわい!かわいい!
    2、袁家組(大)エロい!
    3、メイド服の出所はそういう事だったのか・・・。ならば亜紗のエプドレもそういう事  なら・・・と合点がいきましたわ。

    •  桂花がかわいいと感じてくれたなら嬉しいです。
       袁家については、原作ゲームではどうしてもまとめられちゃう傾向にあったので、個別のエロを早めに入れたかったんです、はい。

       服に関しては、一刀さんが呉や蜀に拾われてるなら、月と詠のメイド服も、亞莎のエプロンドレスも問題がないんですが、魏にいますからねー。
       都をおさえている利点と発信力を利用させてもらいました。
       実際、沙和や華琳は、現代世界のデザインを得たら、色々やりたくなると思うんですよね。

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