洛陽の巻・第十二回:北郷、兵を率いて烏桓を討たんとすること

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 戦は、俺たちの快勝に終わった。厳顔隊が配置に戻った後、明命率いる別動隊の後背からの襲撃が見事にはまり、挟撃によって敵軍のほぼ全軍を捕虜にすることができた。
 後にわかった事だが最初の煙幕弾発射において烏桓の大人に煙幕弾のかけらが直撃し、馬上で昏倒していたらしい。それが、この快勝の大きな要因となったのは間違いない。
 麗羽の幸運恐るべし。
 そして、戦の終わった本陣には、いま全武将が集まっていた。
「北郷、私は……」
 申し訳なさそうに進み出てくる伯珪さん。すっかり頭が冷え、どう謝罪しようか悩んでいるのか、妙にもじもじしていた。
「伯珪さん」
「あ、ああ」
「今回、捕虜にした烏桓だけど、部族丸ごと、俺の直属の部隊として雇いあげることにしたんだ」
「そ、そうなのか。しかし、烏桓は裏切りを……」
 叱責を受けると思っていたのか、唐突な話題についていけていない様子の伯珪さんを無視して、俺は話を続ける。
「でも、俺は騎兵部隊の運用には慣れていない。そこで、烏桓部隊を伯珪さんに預けることにした」
「ちょ、ちょっと待て、私は蜀の将で」
 何事か言っている伯珪さんを無視し続けて、じっと見つめる。
「……わかった。その話、受けるよ。……桃香にはそっちから話つけてくれよな」
 しおしおとうなだれる伯珪さん。
 けして罰としてこの人選をしたわけじゃないんだけどな。そのことをわかってくれというのは今は無理か。
「厳顔さん」
 俺の声に応えて、厳顔が歩み出てくる。俺が何か言うより前にがばりと大地に平伏していた。
「重ね重ねのご無礼、失礼をいたしました!」
「ん?」
「祭殿の言葉、いまはっきり納得いたしました。この厳顔、北郷殿のことを見誤っておりました!」
 おやおや。厳顔の言葉に苦笑いを浮かべてしまう。まさかここまで一気にいくとはね。
「えーと、じゃあ、勝負の件はなかったことにしていかな?」
「はっ。なれど、此度の軍令違反につきましては、どうぞご存分に処分をしてくださりませ」
 彼女の言葉を受けて、俺は賈駆に向けて目で合図を送る。
「軍令違反なんてあったっけ、軍師殿?」
「なんだか、二部隊ほど一時的に突出してしまったことはあったけど、特別なことはなかったわね。戦場ではよくあることよ」
「だ、そうだ」
 厳顔の顔があがる。その顔に悪巧みをする子供のような笑みが張りついていることに関しては、俺はなにも言わなかった。
「なんで、私だけ……そりゃ、私が悪いわけだけど。それにしても……」
 そして、伯珪さんは相変わらず凹んでいた。

 帰りの道程は遅々として進まなかった。なにしろ六千人からの捕虜を連れているのだ。それを移動させるだけでも一苦労というものだ。
 馬は鄴に預けてきたし、食糧等の補給も受けることはできたのだが、それでも進軍は一定以上に早くなりようがなかった。
 戦況報告もかねて白馬義従には洛陽に先行してもらうことにしていた。さすがに馬を操る公孫賛たちをこんなにも遅い進軍につきあわせるのはかわいそうだ。
 麗羽たちも退屈そうだが……まあ、『玄武くん三号』で変な弾を撃ちだしては遊んでいるくらいだし、放っておこう。
 おそらくはいずれ信号として使うために真桜が開発していたと思われる色とりどりの発煙弾を片っ端から飛ばすものだから、俺たちの進軍は妙に派手なものとなっていた。
 夜空に桃色の雲をつくりながら飛んで行く発煙弾を、大樹にもたれかかって見上げつつ、俺はぼんやりと疲れを感じていた。さすがに短く終わった乱とはいえ、久しぶりの戦は堪える。
 特に今回は予想だにしていなかったことばかり起きたからな。敵にしてやられるならともかく、味方の先走った行動で他の部隊が被害を受けるなんてのは御免被りたい。
 あれも、もしかしたら蜀軍ならそれなりに有利に運べた行動なのかもしれない。そんなことも考えたりする。
 ただ、魏軍ではそういうスタンドプレーを喜ぶような文化はない。少数の兵に多くの有能な将を配置できる蜀と、多数の兵を計画的に連動させようとする魏の方針の違いもある。
「溜め息をつくと、幸せが逃げると言いますな」
「できれば、つきたくないんだけど、色々考えることもあってさ」
 不意にかかった声に一瞬背筋が凍りかけて、暖かな調子にほっと一息つく。後ろを見なくてもわかる。この声は厳顔――ついこの間真名を許してもらった桔梗のものだ。
「……此度のことは……」
「いや、そうじゃないんだ。それぞれの軍の特色や、長所をどうやったら取り入れたり、あるいはアレンジ……じゃなかった換骨奪胎して生かすことができるか。そういうことを考えてた」
「ほほう。それで、烏桓も雇ったわけですかな?」
 桔梗が俺と同じように大樹の根元に座り込んだ気配がする。俺は相変わらず彼女の方を向くことなく、星のまたたく夜空を見上げていた。今朝方まで降っていた雨も今夜はない。
「ああ、近いかな。アグレッサー部隊を創ろうと思っていてね」
「あぐれさ?」
「こちらの言葉で説明するのが難しいんだけど、教導部隊の一種かな、敵の戦術や戦略を理解して、それを真似るんだ。模擬戦や講習で敵役をやることで、敵の戦闘に耐えられるような部隊を鍛え上げるわけ」
「ほほう」
 興味をもったらしい桔梗の気配が少し近づく。彼女に現代世界の話をして、どれほどわかってくれるものだろう。おそらく、魏でさえまともに理解できているのは華琳くらいのものだというのに。
「もちろん、敵対するだけではなく、相手の文化や習俗を理解することで交易や親交に使うことも考えられるしね。伯珪さんにはどっちかというと後者を頼みたいんだけど、なかなかうまく話せないんだよ。……そんな簡単に感情が整理できるわけないよね」
「親族の仇というのは、なまなかなことでは晴れませんからな」
 それだけ言って、厳顔は黙り込む。ととと、といい音が聞こえてくるのは、酒を注いでいるのだろう。
「……は……」
「ん?」
「お前様は不思議なお方だ」
 ぼうっとしてしまって、少し聞き逃してしまった。夜半に吹く風が、とても心地よい。
「そうかな」
「あの時、殺す気で射かけましたな」
 剣呑な空気が満ちた。答えを間違えれば切り捨てられる、そんな空気だ。桔梗はどうやらまだ俺を試したいらしい。
「殺すとか殺さないとか思ってもいないよ。ただ、激情に突き動かされて、桔梗さんを止めることだけ考えてた」
 あの時は、おかしいくらいに怒りに支配されていたけれど、いまはそんなことはない。何に憤慨していたのか、それはわかるし後悔はないが、司令官としては下手くそなやり方だったなと思う。
「わしに撃ち返す暇も与えず三度も射れた者は、これまで一人もおりませなんだ」
「先生がいいから」
 秋蘭と祭に弓を教えてもらえる果報者は、この世にそうはいまい。厳顔と黄忠に習う蜀の弓兵も強そうだけど。
「そうではありますまい。……いやいや、お前様がそう思っておられるなら、それはそれでよいのかもしれませんな」
「わっ」
 力強い腕に、ぐいとひきよせられる。豊かな胸に倒れ込み、俺を見下ろす桔梗の顔と正面から向き合った。彼女は、不思議に優しい顔で微笑んでいた。慈愛にあふれたその顔を、俺は美しいと思う。
「ほんに、お前様は、おかしなお方」
 桔梗の顔が俺の視界を埋めつくす。暖かな感覚が俺の唇を覆った。

「閨の中では負けませぬぞ?」
 そんな軽口を叩いた通り、寝具の上の桔梗はすばらしいものだった。たわわな胸はもちろん、むっちりとゆたかな肉置きは成熟した大人の女の色香を漂わせる。その一方で、肌は水を弾くと確信させるほどにすべやかに張っており、這い回る指に心地よい弾力を返してくる。
「勝ち負けの問題?」
「いえいえ、殿方というものは、閨の中では必ず己を上に置きたがるものでしてな」
 余裕綽々の態度で俺の愛撫を受ける桔梗。反応が悪いというのではなく、快楽は快楽として愉しんでいるが、俺との掛け合いもまた楽しみたいということのようだ。その証拠に、会話の合間には嬌声と吐息が漏れている。
「この手つき、わしを絶頂に導こうとしておられましょう?」
 胸をまさぐる俺の手に己のそれをのせ、さわさわと指の股をいらう。その微妙な接触がくすぐったいような、気持ちいいようなどちらともいえない感覚を伝えてくる。
「そりゃ、気持ちよくなってほしいもの」
「それが男の傲慢というもの」
 さすがに、これはかちんときた。いや、そういう風に仕向けているのだろう。
 いまの桔梗は俺に本当には心を許していない。最前、負けを認めたのも、そういう度量を示すことで、蜀の地位をひきあげんがためだ。なにしろ伯珪さんがあの態だから、蜀がさらに立場を失うことを避けようとしたのだろう。
 桔梗という女性は豪胆で度量の広い武将なのは間違いないだろうが、その実態を計算で表現していくだけの繊細さも併せ持つ。肌をあわせることまで計算尽くとは言わないが……。
 のせられるのも癪だが、ここは一つのってやろうじゃないか。
「おや、機嫌を損なわれましたかな」
 愛撫の手が止まったのを俺が怒ったと判断したのだろう。さすがに気が咎めたような小声で俺を探るように流し目を送ってくる。
「いや、闘志をかきたてられてさ」
「ほほ、これは頼もし、いっ」
俺の急な手の動きにはじめて桔梗の会話が途切れた。意識的な話しかけの最中に快感の吐息を漏らしてしまった桔梗はしまった、という顔をする。ほら、余裕のヴェールを一枚はいだぞ。
「はは、これは、手強いかもしれませぬ」
 言いながら、すでに顔は泰然としたものに戻っている。俺に絡みつく腕と足を使ってあちらもねっとりと攻撃をしかけてきたようだ。それに抗うことなく、俺は本能に任せて指を、舌を、唇を彼女のなめらかな肌の上に走らせる。

 執拗な愛撫を続けることで、ようやく桔梗の体は花開くようにほのかに朱色に染まってきた。すでにとろとろと濡れた秘所を含めて、体中がぬらぬらと濡れたように汗と唾液に塗れつつある。
「男、とっ、いうもの……はっ」
 一度気をやった桔梗は、さらに責められても俺にやり返す気力は残っているようで、こちらが太股を舐めあげる間に、俺のものをぎゅっと握ったりくわえたりして愉悦を引き出してくれる。
 彼女の口の中は、とてつもなく熱く、火傷するかと思うほどだ。しかし、嫌な熱さではけしてない。胎内とは違う、能動的な動きが俺のものを包み込んで離さない。
「俺は、いくらでも気持ちよくしてもらってかまわないよ?」
「ふくっ、どこ、どこまでそれが持ちますか、なっ」
 彼女の秘所に顔を埋める。舌をのばし陰唇を舐めこすっていく。ひくひくと反応して吹き出された蜜を、じゅるじゅるとはしたない音をたててすすり上げる。
「ふわあっ」
 別に俺とて、彼女を責め苛みたいわけではない。
 そうではなく、認め合いたいのだ。お互いに尊敬しあい、心を通わせたい。
 これは、一つのきっかけだ。心を開くための、内側をさらけ出すための。
せっかく、肌までさらしてるのだ、心の内をさらけだして交わるほうが、愉しいに決まっている。
 いや、それも言い訳かもしれないな。俺は、いま桔梗をむさぼることに夢中だ。桔梗の体から、心から、喜悦を引きずり出し、それをさらに叩きつけることが愉しくてたまらない。
 一種暴力的な陶酔だとは思うが、俺も一枚一枚と理性と保身の殻を暴かれている気がしてならない。
 いま、ここにいるのは、二匹の牡と牝だ。

「ふううっ」
「何度めかな、イったの」
 絶頂に達したはずの桔梗の中で、ゆっくりと自分のものをうごめかす。彼女の弱いポイントを圧迫するようにして、逸物の頭をこすりつける。
「ふぁっ、ひどい、ひどいですぞ」
 焦点の外れかけた瞳が俺を探す。すでに俺に向かってくる攻撃はなく、ただ、すがりつくように、彼女の腕が、俺の肌を求める。
「俺は傲慢だからね」
 彼女の吐いた言葉を繰り返す様に、ようやく焦点のあった瞳が、絶望の色に染まった。

 何度彼女を果てさせ、何度彼女の中に精を放っただろう。
「お許しくだされ、も、もう、いきたくなっ、ひぃっ、おゆる、お許しをっ」
 俺の腕の中で、苦しそうなそれでいて恍惚の頂きにある声をあげ、昇り詰める桔梗。
 もはや感覚が狂ってしまったのか、彼女の体のどこをいじくっても信じられないほどの反応が返って来る。絶頂に至るというよりは、絶頂の波が断続的にずっと襲い続けているといった感じなのだろう、俺が予期しないタイミングでも体が痙攣しはじめる。
「気が、気が狂うてしまいまする!」
 涙を浮かべながら、がくがくと俺を揺さぶる彼女の耳元に口を近づけ、突き放すように言い放つ。
「狂えよ」
「ひぃいいいいうぅぅうううっ」
 まさに狂ったように悲鳴をあげ、必死で抑えた頭を盛大に振り立てて、桔梗は何度目とも知れぬ絶頂の波にからめ捕られていった。

「お前様はひどいお人。鬼じゃな、鬼」
 俺の精液と唾液と汗に体中をコーティングされたような桔梗は力なく呟く。
「一体、これまで幾人の女子を泣かせてきたのやら」
「泣かせては……いないと思うよ」
「では、鳴かせて、と言いなおしましょうかな?」
 気だるげに、彼女は訂正した。胸の谷間に溜まった俺の精液を指ですくい取り、人指し指と親指の間に糸を引かせて遊んでいる。
「うっ。い、いま、恋人というか、情を交わしているのは二十人くらいだと思うけど……」
「なに?」
 へたりつくように床に身をゆだねていた桔梗が、音を立てて跳ね起きた。
「いま、この時に、ですか? 昔から数えてではなく?」
「うん。近くにいないからなかなか会えない娘もいるけど」
「あっは。これは、これは勝てぬ。いやはや、なんともはや」
 ぽかんと口を開けた後で、唐突に吹き出す桔梗。なんだか、こう、褒められているのかもしれないが、なんともむず痒いな。
「今夜、一人増えた、と思っていいのかな?」
 いや、もう朝か……。天幕の外はすっかり明るい。
「ここまで蕩けさせておいて、いまさら放り出しますまいな」
 桔梗の熱い体が俺にもたれかかり、その大きな胸が俺にどっしりとのっかってくる。俺は言葉で応える代わりに、その薄桃色の唇に自分の唇を重ねた。

「なんだこりゃ?」
 久しぶりに執務室に足を踏み入れた俺の第一声はそんな素っ頓狂なものだった。
 部屋中に金銀財宝、布に宝石、珊瑚に宝剣とありとあらゆる宝物が山と積まれ、その全てがしっかり整理され、何事か書かれた紙が張り付けられている。
「んー、送り主と内容かな?」
 見て回ると紙に書かれているのはそのものを示す名称と、人名がいくつかだった。これらは一体なんだろうと悩んでいると、これまた宝物を抱え持って七乃さんと美羽がよたよたとやってきた。美羽なんて、いっぱい持ちすぎてあれじゃあ、前が見えないだろう。
「あ、一刀さん、お帰りなさい」
「おお、一刀、すまんの。居らぬ間、華琳に言われて使わせてもろうておったのじゃ」
 二人はあいている場所に宝物を置いて、名前の書かれた紙をこれにも張り付けていく。
「華琳が?」
「うむ、妾あての(まいない)の整理を一刀の執務室でしてもよいと言うてもろうての」
「ってこれ、全部賄賂か?」
「そうなんですよー。まったく、みんなちょっと強いものにはすぐ尻尾ふるんですねー」
 ぷりぷりと怒ったふりをしている七乃さん。こりゃ本当は怒っているんじゃなくて、嘲っている顔だな。
「ええと、どういうことだ?」
「うむ、一刀が烏桓討伐に行っておる間に、宦官どもを一掃したのは知っておるかや?」
「ああ、それは聞いた」
 胸を張って自慢げに言う美羽が可愛らしいが、実に彼女はそれだけのことをなし遂げた。
 俺が討伐行に出ている間に、親衛隊をはじめとする軍で内宮を囲み、宦官を全て宮廷から引きずり出し、黄河の工事現場に放り込むことに成功したのだという。
 なんと三日でその全てをやり遂げたというのだからすさまじい。きっと、風が策を練りに練ったのだろう。
「それでな、その後に、突然、賄が届きだしたのじゃ」
「ああ……。美羽が宦官追放の計画をたてたと知って、すり寄ってきたのか……」
「それで、お嬢様と相談したんですけどー、やっぱりこっそりもらっちゃったら一刀さんが怒る気がしてぇ」
「結局、華琳に相談したのじゃ」
 七乃さんと美羽がちょっと後ろめたそうに言う。
 俺はそこでなんだか感動してしまった。この二人が目先の利益に惑わされないなんて。
 そもそも宝物に囲まれて育っていて、あまり金銭に価値を見出していない美羽はともかく、七乃さんまでがそのような考え方をもってくれたことを素直に嬉しく思う。
 ま、美羽が本当にほしがったら躊躇しないだろうけど。
「それはわかったけど、なんで、俺の部屋に?」
「華琳に言われての。誰が賄を寄越して来たかを記録することになったのじゃ。妾たちの部屋に置いておくと目の毒じゃし、誰もいない一刀の部屋がよかろうと」
「ははあ」
「一刀さんのお部屋って、鍵とかしっかりしてますからねー」
 言われる通り、俺の部屋は戸締りをしっかりできるようになっている。
 なにしろ日によっては魏の重鎮どころか王が寝泊まりするのだ。
 下手に破られるようなものをつけるわけにはいかない。
 臨時の宝物庫として使われるのも不思議ではないのかな。普段は嫉妬に狂った桂花を締め出したりするものなんだけど。
「しかし、賄賂の送り主を記録か……。賄賂を贈ったやつはこれから大変だな」
「もう大変なことになってるであろ」
 言うと美羽が、体の各所をぱんぱんと叩き始める。
「うむ、あれ、ええと、あ、あったあった」
 懐から竹簡を取り出し、俺に差し出してくる美羽。それを受け取って開くと、いくつかの人名と罪状、刑罰が書き連ねられていた。
「それはすでに始末したと荀彧からもろうたものなのじゃ。妾はよう知らぬ名ばかりじゃった」
 その名前の一つに眼が吸いつけられる。足の力が抜けて膝ががくがくと震えた。
「ん? どうしたのじゃ?」
「い、いや、なんでもないよ」
 だが、俺は驚愕を隠せなかった。
 そこに記された一つの名前と、彼――あるいは彼女かもしれない――に執り行われた刑に。
 いわく、斬首――司馬懿仲達。

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洛陽の巻・第十二回:北郷、兵を率いて烏桓を討たんとすること」への4件のフィードバック

  1. 更新ご苦労様です。前話とひとまとめで読みました。蜀ルートでは桔梗(&紫苑)に責められっぱなしの一刀サンが、ここでは三国無双(ち●こ的に)するとこがエロ面白かったっす。あと華琳はこっそり首輪つくってもろたんかいね~(笑)

    •  蜀ルートではお姉さんたちは教授する側ですが、魏ルート後の一刀さんは、色々鍛えられてますからねw
       真桜はたぶん何人かには首輪を作ってると思います。使うかどうかは、まあ、閨での雰囲気次第でしょうねぇ。

  2. …物語の序盤から、『司馬仲達、贈収賄容疑で処刑』なんて、史実や演義逸脱の事態が起きれば、
    魏の存続の危機が無くなるかもと言う安堵と、最早歴史の知識が当てにならないと言う不安で、
    色々と複雑な気分に陥っても仕方が無いと言う物でしょう。

    幾ら外史がトンデモとは言え、基礎が三国志演義である以上、予測の為の指針は存在します。
    しかし、司馬仲達が死んだとなれば、その指針の中でも太い一本が、根元から折れたも同然ですし。

    •  たとえ英傑達が女性になっていても、(演義などの物語も含めた)三国志の筋にそこまで反することはなかったですからねー。
       それがこれですから、一刀さんは内心しっちゃかめっちゃかな状態だと思います。
       いろいろ外れていく外史なんだなとわかってもらえるよう、読者に対してもこの初期段階で示せたのは悪くなかったかなと思っております。

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