江東の巻・第一回:北郷、建業に至り、孫仲謀これを歓迎せざること

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 しこたま飲まされべろべろになった真桜を、部屋に連れて行く役目を追わされたのは俺だった。正使の真桜ほどではないが、副使の俺もかなり飲まされたので、少々意識がふわふわしているが、女の子をおぶって足元をふらつかせないですむ程度には正気だ。
 真桜はすでに寝てしまっている。
 館についた頃にはまだまだ元気で、けらけら笑っていたのだが、いつの間にか声が聞こえなくなり、耳元ですぅすぅと小さな寝息が聞こえてくるようになった。
 魏では一番のたっぷりとした胸が押しつけられる感覚に色々思うところもないではないが、それ以上に真桜のかすかな寝息がいとおしい。ずり落ちそうになるのを気合いと共に背負いなおし、彼女の部屋へ向かう。
 正使としての真桜の部屋は、正門から見て右端にあたる。館全体の部屋の配置がコの字を描いていて、俺の部屋は左端。つまり、中庭を挟んだ向かい側となるわけだ。端と端ということになるが、中庭をつっきればかなり近距離にあり、正副の大使として、お互いの連絡が行き届くように、かつお互いの生活は侵害しないようになっていた。
 そんな構造だから、部屋の間取りも俺の部屋と鏡像のような関係になっている。おかげで寝室への道は難なくわかった。床に散らばっている絡操をふまないようにするのが大変だったけれど。
「ん……うぅ……?」
 寝台に寝かせたところで、真桜の意識が少し戻ってきたようだった。
「ん、何か飲むか?」
「……水ぅ……」
 邪魔臭いのか、髪飾りを外そうとするのを手伝ってやった。ばさばさと頭を振っては、うーとかあーとか呻いているのを見ると、妙に可愛らしく思う。
 水を火にかけ、湯冷ましをつくって戻ってくると、真桜は落ち着かないのか寝台の上でごろごろと左右に転がっていた。
「はい、あったかいよ」
「んー。のましてぇ」
 甘えた声で言ってくるのを抱き起こし、杯を口にあててやる。んく、んく、と飲みほしたのを確認して、また横たえる。
「しっかし……。うぃっ。……今日は災難やったなー」
「まあなあ、ただ、あれもパフォーマンス……じゃない、示威行動にすぎないのかもしれないよ。実際、すぐに刀を引いたろ」
「あんなぁ……。華雄はんと呂布はん、噂に聞くだけでも恐ろしいのに、あれだけの気迫ぶつけられて、実力を悟れん武将がおるわけないやろ。あれで引かんのはただのあほやで」
 思い出したのか、ぶるっと体を震わせる真桜。
「でも、華雄は……。孫呉からは侮られがちだしなあ」
 華雄は以前、孫堅に負けたことがあるらしいからな。
 とはいえ、時代的に華雄がようやく初陣という時期で、脂の乗りきった当時の孫堅に負けるのはあたり前とも言えるのだが……。
「それも今日で払拭したやろ。……ちょと……厠……」
 起き上がった時は多少ふらついたものの、なんとか歩けるようなので、見送ることにする。
 さすがに女の子のトイレにつきあうのはマナー違反だろう。しばらくすると、同じようにふらふらしつつも自力で戻ってきて、寝台に転がった。
 ぼすんと寝具に体を沈め、腕を目の上に横たえる真桜。俺が卓に置いた灯火がまぶしいのか、単に疲れているのか。
 そろそろお暇しようかな、という時に、その声がかかった。
「なあ、たいちょ」
 声をひそめて、真桜が問う。その真剣な声音に少々驚いた。酔いはさめきってはいないようだが、思考は回り始めているようだ。
「たいちょ……。たいちょにとって、うちってなんや?」
「そりゃ……大事な人だよ」
 咄嗟に出た言葉だが、本気の言葉でもある。真桜は北郷隊の一員として長い間いっしょに働いてきた。大陸中を駆け巡った日々を一番側で共にした大切な仲間だ。そして、女性としても大事に思う。ちょっとつかみ所のないところもあるが、かわいい恋人だ。
「……言うとくけど、艶めいた答え聞きたいんちゃうで……」
「変わらないよ。男としても、人間としても、仲間としても、俺は真桜を大事に……」
「入ってへんやん……」
 震える声に含まれた感情を判別するのが一瞬遅れたのは、酔いよりも、甘えのせいだったかもしれない。
「え?」
「大事に思うんなら、まずは部下としてやろが! なんでそれが出てきぃへんの!」
 がばりと起き上がる真桜。俺はあまりに興奮している彼女が心配で、寝台脇に近づいて行く。
「いや、だって、お前。部下だったのはもう一年以上前……」
 そうだ。もう北郷隊はない。寂しいことだが、あの戦乱の最中を駆け抜けた北郷隊は解散し、いまや凪は第二軍とも言える郷士軍の長におさまり、沙和は教練の最高責任者となって、兵を直に育てるのではなく、兵を育てる将士を教育する役を仰せつかっている。
 そして、なにより、真桜は俺の上司として呉に派遣される大使だ。
「ちゃう! うちはたいちょの部下や!」
 ぐっと膝立ちになった真桜が俺の肩に手を伸ばす。そのままがくんがくんと揺さぶられる俺の体。酔っているときにこの振動は辛い。
「北郷一刀の部下は、うちらや! 北郷隊の李典、楽進、于禁や!」
「お、おい。真桜」
「祭はんや華雄はんを否定するわけやない。けどな、隊長。けど……うちらかて、うちかて、隊長の部下やんか。そりゃ、いまは、警備隊長でもないし、隊長のほうが部下って形やけど。そんなん、ただの形式やん。うちら、一度だって……一瞬だって、忘れたことないんやで。ずっとずっと待っとったんや。なあ、うちらを捨てたりせえへんといて……。なあ、たいちょぉ……」
 俺は……なぜ、いつまでもこの娘たちが隊長と呼び続けてくれているのか、考えたことがあったろうか。なぜ、すでに無くなった北郷隊の名をことあるごとに誇らしげに語るのか、それを意識したことがあったろうか。
「そりゃな、うちらが仕えとるんは、華琳様や。せやけど、うちらにとって追っかける背中は隊長のものやったんや。うちらが褒めてほしかったんは、あんたや、隊長。うちは、うちはどうしたらええの。帰ってくるってずっと信じて。帰って来たら、うちらと、また、あほやって、一生懸命汗水たらして、叱ってくれて、褒めてくれて、いっしょに笑うてくれる思てたのに……。それやのに、それやのに……」
 肩にかける手の力が抜け、ずるずると、俺の腹の上をずり落ちていくような格好の真桜。ついには寝台の上にうずくまる。
「言うとくけど……女としては不満ないんよ。忙しい合間ぬって会いに来てくれたり、兵器の試験わざわざ買って出てくれたり、凪たちといっしょに警邏にまわったりしてるんも知っとる。愛されとる実感はあるし、たいちょは愛した人をないがしろにはできん男や。けどな、それとはちゃうんよ。人に……人に仕えるゆうんは、そういうのとはまた違うんや……。なあ……たいちょ……うちらを……忘れないで……」
 えぐえぐと泣きだした真桜の頭をわしゃわしゃとなでる。
「部下として……か」
 思い返してみれば、仲間という言葉にのっかって、大事な人という言葉に寄り掛かって、彼女たちから貰う信頼に対して、同等の信頼で返すことを怠っていたのかもしれない。
 華雄や祭、それに麗羽たちや美羽たちといった面倒を見る相手が増えたからといって、昔からの仲間たちに甘えてはいなかったろうか。
「真桜」
「……ん」
 ようやく涙がおさまったのか、顔を上げてくれる。それをしっかりと見下ろして、言葉をつむぐ。
「俺と共にことを成してくれる、そう思っていいんだな」
「うん……。あ、せやけど、さすがに謀叛なんかはちょっとは考えさせてほしいわ」
「そんなことしないってば」
 まじめな顔で言うので驚いてしまう。
「まー、たいちょの立場でそれはないとは思うけど……」
 にへっといつもの悪戯っぽい笑みを見せてくれたのに安心する。そのまま、俺は考えをまとめようと頭をまわす。
「北郷隊は組織としては存在しない。だけど、理念としては存在すると思っていていいってことだよな」
「うん。うちらはいつまでも北郷隊や」
「そうか。じゃあ、真桜。華琳に仕えることはもちろん、この大陸のこと、この世界のことを考えてほしい」
 きょとんとした顔で俺を見上げる真桜。その幼い少女のような表情になんとなく胸の中で熱い感情がうずく。
「せかい……?」
「そう、世界だ。この世界は塞内よりもはるか遠くまで広がっている。海の向こうにもこの大陸と同じくらいの大陸があったりするくらいだ。もちろん、それを全部見すえて行動するなんてのは、王の思考で、俺たちができることじゃない。けれど、俺たちの行動の向こうに、それがあるってことを理解して動いてほしい」
「世界……」
 眉根を寄せて考えている彼女の横に滑り込む。姿勢を変えて、もたれかかってくるようにする真桜を抱き留めつつ、語り続ける。
「具体的には、これまでと変わらないよ。身近な民たちのために働けばいいんだ。真桜ができることを……ね」
「うちにできること……か。そう言われてもやなあ」
「そうだな、船なんてどうかな」
「船?」
 論理に飛躍があったか。酔ってるから思考がすっ飛びがちだな。最初からやろう。
「うん、民にとって大事なのはなんだと思う?」
「そりゃあ、命やな。襲われんこと、飢えんこと、凍えんことがいっちゃん大事やろ」
「それを支えるのは軍の力だったり、農地の生産力だったりするよな。でも、だんだんと人が増えて落ち着いてくると、大事になってくるのは運輸なんだ」
「ものを運ぶっちゅうこと?」
「そう。食が足りないところには迅速に食料を届け、布が足りなければそれを輸送する。そういう物流が大事になってくる。そうやって交易が生まれ、様々な文物が交流していくこと、それによって国が富んでいくんだ」
 ふむふむと真桜は素直に聞いていてくれる。彼女にしかできないことは本当にたくさんある。カメラを再現できるような発明家はこの世界でも貴重に違いない。
「その中でも、船は素早く、大量の物資を運ぶことができる。交易には最適な代物だ。幸い、この大陸には黄河と長江があって、長距離輸送も可能だしな。真桜には、そういう交易を促進する船をつくってほしいと思ってる。呉はそういう技術を思いつくにはいい環境だろ?」
「せやなあ。たしかに船の技術は必要やな。うちら、水上では呉にはかなわんやろしなあ」
 それでも赤壁は勝ち抜いたんだけどな。あの時の真桜の連環の計破りは、いま思い出してもすごいと思う。
「うん、軍船についても工夫が習得できるだろうね。でも、なにより俺が真桜に期待しているのは、海へ乗り出せる船だよ」
「海ぃ~?」
 あっけにとられた感じで、真桜が俺を見上げてくる。
「海ってあれやろ、でっかああああい水たまりやろ?」
「そう、河が行き着く先、大陸なんか飲み込むくらい広い海さ。とはいえ、さすがにすぐに遠洋に出たりする必要はない。交易という意味では、沿岸をはしる船があれば充分だからね」
「それにしたって……。風も流れも違うやろし……」
「俺は、これは真桜にしかできないことだと思っている」
「うちにしか……できひんこと……」
 その言葉を言った途端、真桜の動きが止まる。ぶつぶつと俺に聞こえないような声で呟いて、ふっと顔を上げる。その顔は闇の中でもわかるくらいに輝いていた。
「うん……。たいちょ、うち頑張ってみるわ」
「もちろん、大使の仕事はちゃんとやった上で、だぞ?」
 声に出さずこくりと頷く真桜。
「それから、後で二十枚くらいの紙片を渡すよ。あっちに戻ってた時に書きためたものだ。真桜なら再現……いや、もっとすごいのができると思う」
「……なんなん?」
「蒸気機関。水が蒸発する時の膨張する力を利用した動力発生源さ。いろんな機械の動力として応用することができると思う。小型化は難しいけど、それこそ船なんかにはもってこいだ」
 声の調子に何事か感じ取ったのか、神妙な顔をしている真桜にそうやって説明する。図書館で必死に物理学や工学の本を読み、書き写し、この世界でもなんとか再現可能であろうものの仕組みを書いた日々が思い出される。
 帰れるかどうかわからず、けれど、信じ続けていた、あの日々。
「ええの? なんか、それって大層な技術ちゃうの?」
「うん。だからこそ、迷ってたんだけどな。真桜が部下としてついてきてくれる覚悟をしてくれているなら、俺も覚悟しようと思ってな」
「そか……。うち、うれし」
 体をすり寄せてくる真桜。あの超弩級の胸が俺の体にこすりつけられるような形になる。大きさだけならともかく、真桜は背が高いほうでもないのにこのとんでもない胸を持っているのは驚くべきことだ。
 あ、脳内の稟さん、なんかもう呆れていますね?
「ちょ、ちょっと真桜」
「ん、なに?」
「いや、胸が……その……」
 それに、これまでも間近にいたので、二人の間で温められた空気がお互いの体の香りをふんわりと巻き上げている。酒の臭いに紛れて、やわらかい甘い香りが俺のいろんな部分を刺激してくれる。
「ええやん……」
「……そりゃ、悪い気はしないけど……」
「それとこれとは別言うたやん?……な。こっちももう一度刻んでくれへん? 心だけやのうて、体にも……」
 真桜の掌が俺の腿の上に置かれ、より上体を俺に任せてくる。さわさわと布越しに腿の内側をなであげてくる真桜の指。
「真桜の体が忘れられないくらい刻んでやるよ」
 そう言って彼女の体を寝台の上に押し倒す。
「やんっ」
 彼女の口から漏れたかわいい声は、期待と誘惑に濡れていた。

 酒宴の後だからか、呉の気候になれていないのか、真桜の肌は普段より少し汗ばんでいるように感じられた。
「なんや、うちこない汗かいて緊張しとるみたいやん」
 彼女を抱きしめるようにしながら、邪魔な服を剥いでいくと、本人も気にしていたのか、そう言って笑う。
「緊張してる?」
 真桜の場合、脱がせると言ってもほとんど脱がせるものがない。たわわな胸もはじけるように解放されて、残るはホットパンツのみだ。
「んー、興奮してる」
 ホットパンツの前をぷちぷち外して開いていくと、目に入るのは下着……ではなく、ぬめるような黒革のベルトだった。
「あれ、つけてるんだ」
 脱がしてみると、革ベルトの合間を縫うように、細い紐のような下着が目に飛び込んでくる。光沢のある青の下着と、黒いベルトが真桜の大事なところを覆っている姿は、とてつもなく煽情的だった。
「た、たいちょがつけてろ言うたんやんか」
「だって、真桜がしたいことするためにはしかたないだろ? 傷つけたりしたくないし」
「わ、わかっとるけど……指摘されると恥ずかし……」
 頬を赤らめて呟くように言う真桜があまりにかわいすぎて、覆い被さるようにして唇を奪う。どうしても意識せざるをえない胸をゆっくりとまさぐりながら、彼女の唇の周りをなめまわす。
「ん……」
 普段のおどけた調子とは違う声。その声がたくさん聞きたくなって、柔らかな肉の塊を掌で転がす。手にはおさまらないほどの真桜の胸の奥から、どくんどくんと鼓動が聞こえるような気がした。
「真桜」
 彼女をむさぼりたいという欲望で掠れた声でその名を呼ぶ。
「ん、たいちょぉ……」
 同じように昂った声を出す口の中に、舌を踊らせる。待っていたように迎えてくれる彼女の舌と絡めあい、じゅぶじゅぶと唾液を交換しあう。
「甘いわぁ……」
 口を離すと、唾液が糸を引き、真桜の顎から喉へ垂れ落ちていく。
「真桜もおいしいよ」
「うちも、たいちょのはなんでも甘く感じるで? なんでやろな。精液かておいしく感じるんや……」
 言いつつ、真桜の指が、俺のものに布地の上から絡みつく。ズボンをつっぱらかしているそれをなであげるたびに、彼女はうっとりと息をつく。
「軟膏は?」
「……んん……道具といっしょにそこの棚の……なか。……て、たいちょ……」
「ん、今日、試してみよう。……だめ?」
 俺が行った言葉に眼を見開き、びくりと震える真桜に驚いて、顔を覗き込む。
「んーん、うれしゅうて……」
 陶然とした顔で、彼女は言う。俺は寝台を降り、真桜の指さした棚の前に立つ。面倒なので、ここで服を脱ぎ捨ててしまう。
「もちろん、無理ならやめるからな?」
「うん。全部たいちょに任せるわ」
 棚を引き出し、真桜の言う『道具』の中をごそごそ探る。真桜自身がつくった『道具』はどれも淫靡な形をしていて、それらを真桜の体で試してみたりするのは彼女との愉しみ方の一つだが、今のお目当ては別だ。
「あったあった」
 小瓶を見つけ、数本取り出す。いっしょに、『隊長三号』とやらいう真桜特製の張形も持ち出すことにする。隊長系列は魏の重鎮方には大好評やで、と真桜が言っていたのはあくまで冗談だと俺はいまでも信じている。
 寝台に近づくと、寝ころがったままの真桜が腕を伸ばしてくる。その指に腕を取らせつつ、寝台に上がる。寝台脇の卓に持ってきた道具を置き、改めて彼女と抱き合う。
「真桜の体は抱きしめていて気持ちいいな」
「ほんま?」
「うん。程よく引き締まってて、やわらかくて」
「でも、ここらへんとか、肉ついてきたかなー、って……」
 たわいないことを話しながら、キスを交わし合う。俺のほうは全裸で抱き合っているので、彼女の肌に自分のものが触れるたびに快感が走る。真桜もそれを感じ取ってくれているのか、息が荒く上がっていく。
「ん……」
 彼女の下着をずらし、足から抜き取る。大事なところを隠すにはあまりに面積の少ない布切れは、くしゃくしゃと丸まって、余計に頼りなく感じる。残されたのはお尻から腰にかけてまわる黒革のベルト。
「たいちょ……」
 最後の砦に取りかかる前に、彼女の下生えの合間に指をのばす。すでに蒸れあがったそこからは、濃密な女の香りが漂う。男の脳髄をとろかすあの香りだ。
「あ……ふうっ」
 陰裂をなであげると、ぬちゅりという音と共に、陰唇が開いていく。上の唇についばむようなキスを降らせつつ、下の唇に指をひらめかせる。ちゅぷくちゅと音をたてて、彼女の汁に塗れていく俺の指。
「ふう……はあぁ……たいちょぉ」
 キスに応えながら、彼女は切なげに身をよじる。その体を抱き留めながら、うつ伏せにして、またがるような格好になる。そうすると、お尻を覆う革の装具がよく見える。腰にまわってがっちりと固定された、それ。
「外すぞ」
「う、うん……」
 ごくり、と息を呑む真桜の背中をゆっくりとなでさすり、安心させてやる。かちり、と金具を外し、腰の骨にかかっていた二本のベルトを持ち上げる。すると、彼女の真白いお尻がほんの少しへこむように装具の形に痕になっていた。そのままひっぱると、ベルトが彼女の肌から離れきったところで、抵抗を感じる。
 最後につながっているのは……彼女の菊門に入り込んだ張形――お菊ちゃん十二号。
 その付け根をぐっと握る。
「力を抜いて、な」
 一声かけて、お菊ちゃんを抜いていく。幸い、張形では何度かここをいじったこともあるので、力が抜けた瞬間を見極めて抜き取ることができた。
「んぁああああっ」
 ずるずると引き出されるそれに、明らかな快楽の声を上げる真桜。ひくひくと蠢く彼女のお尻をちょっと不思議な気持ちで眺める。本来、ここは性行為に用いる場所ではないのだが――あるいはそれ故にか――とてつもなくエロチックに感じてしまう。
「あうぅうう……」
 殆どを抜き取ったものの、抜けきれていない先端で、お尻の穴をいらう。同時に前に手をやると、びしょびしょに潤ったそこが、後ろの門のひくつきと共に、より潤沢に愛液を吐き出している。
「すごいな、真桜。俺にいじられてどうなってる?」
「す、すけべぇな音してる……。うち、すけべぇやあ。いやあ……やぁ……」
 顔を寝具に埋めていやいやと頚を振る真桜。その姿を見ていると、愛しさが胸の奥で爆発するような感覚を覚える。
「これだけ濡れていたら、お尻に塗り込めただけで、入れられるかもね」
「そ、それでもええよ……」
 完全に抜き取ると、ようやくのように答えが返ってくる。脇の卓に置いた軟膏の瓶を手にとる。
「冗談だよ。切れたりしたら大変だからね」
「た、たいちょはうちのこと、き、気遣いす、ぎぃいいいいいいっ」
 掌に出した、ねっとりとした華侘特製軟膏――弛緩作用と軽い麻痺作用のある薬剤の混ぜられたローションを、その部分に塗り込むと真桜の声が跳ね上がる。
「はっ、はっ、うふうぅうっ、はうっ。あああっ、たいちょおおお」
 いきなり冷たいローションを塗り込んだのは刺激が強すぎたかと思ったが、優しくお尻の谷間から彼女の性器全体に塗り込めるようにすると、甘い呻きが漏れ出てくる。
 この特製ローションは、後ろで俺のものを受け入れたい、という真桜の願いを聞いて、華侘に相談してつくってもらったものだ。その折りには、『愛の形は人それぞれだからな』と何度も頷かれたものだが……。
 いまいち誤解されている気がしないでもないが、名医に協力してもらえたのはありがたい。
 これ以外にも、真桜自身に様々な太さのお菊ちゃんシリーズをつくって、少しずつ慣らしていくこともしてもらった。そんなところを拡張する趣味はないが、俺のものを受け入れた途端裂けてしまった、では大変だからな。
「あ、いひぃっ……ううっ、たいちょ、そこぉ……あかんわぁ……」
 たっぷりとローションを注ぎ、股間全体に塗り込んでいく。彼女の内奥からわき出てくるものなのか、ローションなのか判然としないくらいにまで陰唇に塗り込めた後で、本丸の菊門にとりかかる。
 入り口をこするようにすると、びくりと背中が震えた。後ろの感覚は個人差が大きいらしいが、自分から言いだすだけあって、真桜の感覚は敏感なようだ。
 ローションで覆われた中指を静かにそこに埋めていく。先程まで入っていたお菊ちゃんよりは細いが、異物感は当然あるだろう。
「んぅ……たいちょの……ひぅ……指っ」
 枕に顔を埋める真桜。そうすると可愛い声がくぐもって、余計に淫靡に聞こえてくるようになる。人指し指と薬指で陰裂をいじくるとだいぶ熱くなっている。
 そのまま、人指し指を彼女の中に熱く蜜を吐き出す中に差し入れ、ぐりぐりと中指との間で肉をつぶす。ローションのぬめりもあいまって、触れ合うのがなんとも心地よい。
「や、たいちょ、そこ、あか、あかんて、気をやってまうて、あ、あ、あああああっ」
 肉の内壁を両方の穴からいじくると、彼女の背中が跳ね上がる。
「うはふっ、ほんと、イッてまう。ああっ、かんにんや、たいちょ、たいちょ……っ!!」
 ぐっと体を押し上げて、彼女の肩に顎をつけるような形で背中を俺の体で覆う。
「一度イッておこうか」
「う、くふぅうっ、は、はい、たいちょ、ええんやね、イってええねんな……あああっ、くる、きてまううううっ」
 俺にぶつかるようにして、体をつっぱらかせ絶頂を迎える真桜。はぁはぁと荒い息をつき、ぐったりと寝具に身を横たわらせる彼女の中から指を引き抜く。
「ふわっ」
「真桜、いけそうだね」
 膨らむように開いたり閉じたりしている菊門と、誘うように蠢く陰唇。どちらも魅力的だが、今回は……。
「ん……大丈夫や。いつでも……たいちょの好きな時に……な……」
 それでも、腰を持ち上げ、ぴたりとそこに俺のものをあてると、ふひゅっ、と変な声を上げる。さすがに緊張を隠せない彼女の背を肩口からゆったりとなでる。
「息を吐いて、力を抜いて……」
 俺の言葉に深く息を吐き出す真桜。彼女の体を固定し、ぐっと体を進める。本来は排出方向にしか働かないはずの場所だけに抵抗は強い。
「ああっ、あああああああ……」
 強い抵抗を感じつつも、ローションのおかげもあってなんとか入り込んでいく。亀頭が埋まったところで、一休みと眺めてみると、真桜の張りつめたお尻の穴に自分のものが埋まっているというのはなんとも不思議な光景だった。
「やっぱっ、たいっ、ちょうのんはっ、ふと、太いっ……」
「もう一番きついのは越したからな」
 瓶をもう一つ手にとり、ローションをたらしつつ、さらに奥へと進む。性器の内奥とは違う、ただつるつるとした肌が圧迫してくる感覚に違和感と共に快感を覚える。
「ん……。あ、奥までっ、埋まって……」
「もう、少しだからな、さすがきついな……」
「ま、まだなん、これ。うわっ、たいちょの長い……」
 全て埋め込む。彼女の熱と、手で搾り取られるような圧迫感が、真桜を征服しきった実感となって、脳天を貫くような快楽をもたらす。
「お腹……お腹、いっぱいや……」
 うっとりとした声。その声が、いつしか嗚咽に変わっていく。
「お、おい? 苦しいか? 痛い?」
 心配する声に、なんとか頚をひねって俺を見上げる顔は、予想外なことに、涙と……晴れやかな笑みに彩られていた。
「ようやく……全部たいちょにあげられた思たら、うれしゅうて……うち……」
 はらはらと流れる涙と、喜びの形を刻む口元。いつもそこに浮かぶ皮肉げなおちゃらけたものではないそれに、俺の腰は思わず動いていた。
「んああああっ」
 きつさをものともせず、掘り進み、引き戻す。にちにちじゅぷじゅぷという音は、ローションの立てる音か、それとも俺や真桜の体液なのか。
「うは、ふううう、かはっ……」
「こっちにも、な」
 『隊長三号』を手にとり、彼女の性器の入り口を探るようにあてる。慌てたような顔が俺のことを見上げる。
「いや、ちょ、うち狂わせる気ぃ?」
 その問いかけは、誘惑にほかならないと、彼女は気づいているのだろうか? いや、あるいは女性というものは皆……。しかし、男というものは、罠だと知っていても突き進まねばならないものなのだ。
「ああ、ずっとずっと俺に狂わせておくつもりさ」
 俺のものを模したものが、溢れ出る蜜をかきわけながら、彼女の中に埋もれていく。その圧迫感が俺自身のものへも伝わってくる。彼女の快楽を引き出そうと、二本の「俺」が彼女をえぐり、こねまわし、突きたてる。
「んんっ、好き、ふわああっ、たいちょ、好きぃ……」
 そうして、うわごとのようにあえぐ彼女を、俺はさらに激しく犯しぬくのだった。

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江東の巻・第一回:北郷、建業に至り、孫仲謀これを歓迎せざること」への2件のフィードバック

  1. 雪蓮「NDK?NDK?嫌がらせしようとして空振ったしまってw」
    蓮華「(--〆)#<ビキビキ」
    って感じですね(笑)
    マッハデレに定評のあるチョロイン蓮華サマもこちらでは遅咲きでしたからね~。
    第一印象って大事w

    •  蓮華さんは基本的に謀略には向いてないでしょうねw
       裏目に出やすい性格だと思います。
       まあ、呉をじわじわ蝕んでいるっていうのはあながち間違ってもいない印象だとは思いますがw

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