北郷朝五十皇家列伝・鳳家の項[鳳統]

 鳳家は鳳統にはじまる皇家である。
 後に周家から引き継ぐ形で、七選帝皇家となる家系でもある。ただし、それまでは、教育を生業としており、そちらで有名であった。
 中でも知られているのは、鳳家による後宮教育、皇婿教育であろう。
 これらの教育が実施された機関は、後世まとめて西門大学と呼ばれる。これは、襄陽にあった頃、鳳家が西門近くに館を構えたことから来ている。
 ただし、実際に襄陽・洛陽・建業において開かれたこの機関は、初期には鳳大学と通称されることが多かった。
 場所の変遷は鳳家の基盤の移り変わり以上に、後宮が置かれる都市の移り変わりが大きく影響した。
 通例、西門大学は後宮内において開かれたからである。
 西門大学における教育は、鳳家自身が編んだ著作によって進められたが、それは、八代恭帝の頃に十五部百二十巻附図十八巻という大部の著にまとめられた。
 いかに、その内容を記そう。
 一部から八部までは、他の皇家でも行われていた一般教養が主であった。
 当時の教育水準を考えれば、非常に高度な内容ではあったものの、同時代の学識者たちにとっては、努力すればたどり着ける程度の知識であった。
 すなわち、一から三部まででは、神話を含めた歴史、中華本土の地勢、各種言語を扱う。
 四部、五部で帝国各皇家の家史とその支配地域の詳細な歴史と地勢、西方で優勢だったペルシャ語、トルコ語、ソグド語を扱う。
 七部は東方大陸の習俗、経済などに関して解説する。
 八部は皇家の支配外の西方地域などに関する情勢が扱われる。
 また九部はおもに大学の建築物、規則などが書かれたもので、教育のためのものではなく、教育者自身へ向けた覚え書きのようなものである。
 鳳家の後宮教育の真骨頂は十部以降のものであり、その内容は以下の通りである。
 十部は秘中の秘として、その内容を明らかにされない。
 十一部は前半部を同じく明らかにされない。後半部分三巻は主に健康を保ち、身を護るための歩法について記されている。
 十二部は陰陽部と言われ、房中術と内丹の基礎概念が記される。非常に道教的傾向が強く、学問の書といよりは、教典に近いと言われる。
 十三部は散逸している。
 十四部十二巻は閨房の実践的な房中術、すなわち性技術を扱う。
 十五部は散逸している。
 このうち、十部、十一部前半は秘伝であり、鳳家の人間と、後宮教育を受ける皇妃、皇婿しか知ることはないと言われる。
 だが、おそらくそこに含まれるのは後宮、宮中における儀礼に関わる理論と実践であると推測されている。専門分野の研究者にとっては垂涎の的であろうが、一般には興味を惹かない類のものである。
 それよりも注目されるのは、散逸している十三部と十五部である。
 あわせて十二巻になる両者には、十四部を補追、発展させた内容が書かれていたと言われる。
 十四部は主に挿入後の性技術が描かれているが、それに対して、十三部はいわゆる前戯を含んだ男女の興奮の高め方が描かれていたことが、他の資料から明らかである。
 だが、それ以外にも陰萎の男性の治療法、不感症の解消法などが記されていたという。
 十五部はさらに重要で、この部には十二部から続く陰陽理論の集大成とも言える、男女の誰もが極みのその先に至れるという、性技巧の極致があったと言われている。それは、単純な肉体的な技巧に留まらず、心身を合一させ、その精神をも揺さぶり……(中略)……
 なお、この散逸したというのは、あくまで鳳家の主張であり、実際には、鳳家の当主によって秘密裏に継承されているという説もまことしやかに……(後略)

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